ストーリー
ラピスと呼ばれる宝柱が、世界の運行を司っている世界。選ばれし乙女―アイドルたちは、詩を歌い、魔力をそれに注ぎ込むことで、世界にあまねく魔力が行き渡り、それにより世界が安定して運行するよう見守っている。
そんなアイドルたちの力を引き出すために、その旋律を整える「調響師」の青年シードは、皇王であり、アイドルの一人でもあるブリジッタの式典に来ていた。そこで、ブリジッタ、そしてアイドルたちが、「アマデウス」と名乗る仮面の集団に狙われていることを知る。それは、世界を滅びへ導く恐ろしい企ての始まりだった―
という感じです。
まず初めに言っておきますが、今回ストーリーは正直駄作です。「アマデウスからアイドルたちを守るため、世界中に散らばるアイドルたちを救出し仲間にする」→「アマデウスによってアイドルの故郷がピンチになるので助けに行く」→「ラスボス戦」の3部構成なんですが、第1部と第2部を12人いるアイドル全員(一部例外あり)について同じように繰り返すため、ストーリーが冗長とか言うレベルじゃないです。これ23話もかけてやる話じゃないよ。
そして、個々のエピソードも質が低いです。登場人物の心情が全然描かれていないというか、読んでいてすごく薄っぺらな印象を受けました。主人公とアイドルの交流はそれなりに描かれてはいますが、アイドル同士の関係性がほとんど描かれていないため、人間関係にも全然入り込めないし…。エンディングも12人分見てもいいかもな…と考えていましたが、シーナエンディングの出来があまりにひどかったのでその意欲も霧散しました。ハーレムゲーで個別エンディングを用意しているのに、何でこんな中途半端なものを見せられなければならないのか。
同時にプレイしていた「うたわれるもの」のストーリーが良かっただけに、辛かったです。サブイベントも数を減らしてもっと内容を練れ。
システム
ADVパートとバトルパートを交互に繰り返しながら進んでいく、オーソドックスなタイプのSRPGです。
ストーリーは途中に大きな分岐はありますが、全体としては同じ流れです(エンディングは12種類あり)。そのほかに任意のサブイベントも多数用意されており、ボリュームはあります。
バックログ確認、スキップ、オート既読モードなど、基本のシステムはきちんとしています。が、ボイスはパートボイスです。普通パートボイスといえば、重要シーンはフルボイス、そうでないシーンはボイス無しというのを想像すると思いますが、違います。一つのシーンの中に、「ボイスありのセリフ」「ボイス無しのセリフ」「相づちのみのボイスが入っているセリフ」の3種類が混在しています。すごくうっとうしい。あと、ヒロインたちは全員歌がうまいという設定なのに、それが全くボイスに反映されていません。シナリオ上歌うシーンがあったとしても、歌詞もない鼻歌のような曲を全員バラバラに歌うだけ。なんだこれは。
キャラクター育成は比較的バリエーションが広く、好みのキャラに育てることが可能ですが、実際は火力と回復力を優先するのがいいと思います。
キャラクター
ヒロインのキャラクターも、色々な要素を各キャラに持たせているにもかかわらず、それがシナリオ上十分に生かせていなかった感じがあります。特にジォーカーの悪魔憑き設定や、パルスの未来人設定など。とはいえ、バリエーションは豊富なので、一人くらい好みの子が見つかるのではないかと思います。個人的にはロボ娘のシーナを愛していましたが、全然デレる気配がなく、最終決戦直前に変なデレ方をしたのでちょっと残念。
戦闘
スクエア制、アクティブターン制のSRPGです。こちらはなかなかに出来が良かったです。3DのSDキャラが可愛く作られていて、見た目も○。
特徴的なシステムとして、「コーリング」があります。これは、行動を犠牲にして詩を歌うことで、次のターンまで周囲のキャラの能力を上げたり、必殺技に必要なゲージを貯めたりする効力があります。何人かで同時に歌うことでさらにこの効果を強化出来るのですが、歌っている間は何もできませんし、敵には襲われやすく、ダメージを受けると歌が中断されてしまうこともあり、いいジレンマになっています。逆にこれを逆手にとって囮にすることもできます。
また、HPが0になったキャラは、その場で気絶します。気絶した状態でダメージを受ける(もしくは次のターンが回ってくる)と戦闘から離脱しますが、その前に気絶から回復させることが出来ます。これも時にあえて気絶を見逃してターンを稼いだり、敵のターンが2回連続で回ってくる時は回復を優先したりと、戦略性を生み出すのに一役買ってました。
他方問題点もあります。まずZOCですが、これはコーリングの効果でしか発生させられません。コーリング中は無防備ですので必然的に後衛がコーリングすることになるのですが、本来ZOCで前衛が壁を構築している間に後衛が攻撃するのが基本なので、うまくかみ合っていません。またこちらの術の射程はほとんど2マスなので、敵とは接近戦になりやすいのですが、ZOCが形成出来ないせいで乱戦になってしまいがちです。
それに、通常攻撃の存在意義が分かりません。ほとんどのキャラは(術師なので当たり前ですが)物理的な攻撃力は低く、通常攻撃するより歌で弱点を突いた方がいいです。弱点を突くのが比較的簡単なこと、通常攻撃だと反撃を受ける可能性があること、毎ターン術を使っても問題ないくらいMPが豊富なことなどから、通常攻撃をする必要性がほぼないです。これもバランスを調整すべきだったのでは。
難易度は変更が可能ですが、難しい方でプレイすればそれなりに歯ごたえがあります。特に敵のAIが賢く、嫌なところを的確に突いてくるので、推奨レベル以下で挑みかつ特殊条件を満たしてクリアしようとすると、結構大変かも。ちなみに全てのサブシナリオをこなしていけば、特にレベル上げをせず、全キャラをまんべんなく育てても、クリア出来ます。
なお非常にバトル数が多いです。うたわれるものは隠しダンジョン入れて33ですが、こちらは100を越えてます。
ユニット雑感
キャラ |
ストーリー |
戦闘 |
シード
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本作の主人公。砂の呪いという体が徐々に枯れていく呪いを受けているため基本的にやる気無しだが、やるときはやる感じ。ただ達観しすぎていて感情移入しにくいかも。中盤までは朴念仁でラブラブオーラを出しているヒロインたちも適当にあしらっていたのに、終盤になって急に愛の告白を始めたのにはびっくりした。しかも12股。 |
ユニットではなく、フィールドの外からいろいろな支援をする役回り。といっても支援がなくても戦力的には問題ないので、毎ターンVP(キャラの強化に必要なポイント)を稼ぐのが安定。いざというときに役に立つことがないではないものの、本当にピンポイントの場合だけ。 |
アクア
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シードの義妹。この手のキャラによくある全開ブラコン少女だが、うっとうしいレベルではなく割とあっさり風味(時々暴走)。メンバーの中では家事を引き受けるお母さん役。
ぼくには妹属性はなかったので刺さりませんでしたが。 |
最初から最後まで頼りになる回復役。耐久力もそこそこにあります。水属性は敵の弱点になっていることも多いため、火力としても優秀。水属性はライバルも多いですが、安定して戦っていけます。 |
ジォーカー
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悪魔に憑かれた騎士。騎士なのに国を捨て、シードのお守りをしていることについては深い話がありそう…なのですが、結局最後まで明かされませんでした。悪魔憑きのせいで一度感情が暴走し出すと止まらないという設定もあるのですが、上手く生かせてなかった気がする。
なんだかんだで面倒見も良く、わりと好きなキャラでした。 |
シーナと並ぶ前衛職。といってもこのゲームは術火力が高い方が圧倒的に強いので、いまいち活躍の場を奪われがち。火属性は耐性持ちも多く、そもそも弱点を突いてもジォーカーではダメージも出ないので、むしろ物理攻撃を伸ばしたほうがいいかも。その物理攻撃も射程が狭く、効果が広い(ので味方を巻き込みやすい)ので愛が必要。 |
ブリジッタ
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アールアージュを治める皇王。物語の進行役でもある。食いしん坊であることを除けば普通のお嬢様キャラですが、誰彼構わず勝負を挑むという性質上ややうっとうしく感じることも。
○○の裏切りエピソードについては、伏線もなく、シナリオの必然性もなかったので別の意味で予想外でした。意表を突けば良いってもんじゃねーよ。 |
攻撃と回復の両方ができる、よく言えば万能型。もっとも早くから範囲回復や蘇生が使えるため、頼りにはなります。風属性は刺さる敵と全然刺さらない敵に二極化している印象がありますが、油断していると意外なところでダメージがかさんでいくこのゲームでは、なんでも出来るキャラは結構重宝しました。まあラナとかぶってるのだが。 |
ラナ
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有翼の少女。シードにプロポーズされたと勘違いしています。ゆったりしたしゃべり方をしていますが、シードに迫るセリフも多く、割と押しが強い印象。最初の頃はいまいちでしたが、中盤以降変なメンツが増えるに従い、心のオアシスになってくれました。 |
弓兵ユニット。貴重な射程3マスの術を覚える上に、大敵の敵に刺さる光属性の術も使え、その上範囲回復+状態異常回復も使えるという非常に優秀なキャラ。万能+風属性でブリジッタ様の影が…。 |
パルス
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マッドサイエンティスト、未来から来たと自称しており、確かにオーバーテクノロジーを駆使しているのですが、結局それが本当かどうかも確かめられないままエンディングに。世界が滅びるかどうかという話をしているのに、なぜ未来から来たパルスの話を聞かないのか大いに疑問。 |
火力は高いのですが、耐性持ちの多い火属性なので割と生かせる場面が少ない感じに。補助術が充実してますが、そもそも補助の必要性が薄いゲームなので… |
シーナ
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パルスの発明したお母さんロボ。その正体はパルス(のパンツ)に歪んだ愛を抱く変態。パルスと仲の良いシードを敵視しており、ことあるごとに変態呼ばわりしてきます。パンツ握りしめてるやつに言われたくない。一応発明で役に立っているパルスと違い、シナリオ上では場を和ませる以外にほぼ役に立ってないのが気になる。…え?アイドルですらないの!?
とはいえ、プレイヤーにこびてるキャラが多い中で、パルス以外には全くこびない彼女、結構好きです。 |
防御力の高い壁ユニット。攻撃力は雀の涙で悲しくなってきます。そもそもこのゲームで壁役の存在意義は…それでも中盤はガーディアンを使ってコーリング中のキャラを守ることもできますが、終盤はガード出来ない範囲術がばんばん飛んでくるので…。火力を強化するのにVPがかかりすぎるのもマイナス。 |
ヒソカ
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自称ヨゴレのアイドル。逃亡生活が長すぎてMに目覚めてしまったという因果な少女。結構壮絶な過去を持っているにもかかわらず、明るく前向きなのでいろいろ励まされるキャラです。 |
回避力に長けた中衛ユニット。射程は長いものの火力は低めだが、中盤頃から火力も上がり、回復で忙しいアクアの代わりに水属性の主攻撃役に。使い勝手は良好。 |
ヴァイオレット
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始まりの魔女ソレイユの一人娘。お姉さんらしくシードをからかうのが日課だが、シードからは適当にあしらわれている上に、意外と詰めの甘さや致命的なドジが目立ち、全体的にがっかりキャラ。だがそれがいい。ゆかなさんの声もいい。魔女っ娘なのもいい。
シナリオ的にも非常に重要なポジションで、スタッフ愛がうかがわれるキャラ。 |
刺さりやすい光属性術と、まともな使い手がいない土属性術の両方を使える火力担当。回復もできるので非常に忙しいキャラ。術には強いが物理攻撃には弱いので、敵を近づけさせないように。 |
フェイラン
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鬼族の少女。鬼族は悪いことをすると角が生えて人の姿を失うとのこと。××するとそれを防止することができる…という話が出たのにこのエピソードも解決されず。なぜだ! |
耐性持ちの多い土属性担当のため、ヴァイオレットの影に隠れて目立たないユニット。しかも火力が低いので、全ユニット中1,2を争う使い勝手の悪さ。愛が要りますよ。 |
カスミ
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シードとアクアの先生。登場シーンは非常においしい感じでしたが、その後知恵袋ポジションをヴァイオレットに持って行かれてしまった悲劇の人。それでもシードの精神的支柱として活躍が見られました。ごめん、メガネ萌えも女教師属性もないので…。 |
競争率の高い水属性ユニット。加入直後は火力が低く頼りになりませんが、じっくり育てると射程3マス攻撃範囲2マスの術を覚えて強くなります。ただし極めて装甲が薄く、油断すると戦闘不能になっていることも。 |
アルト
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レイヴァリアという、アイドルとは少し違うポジションの重要人物。選択肢によってはソプラとアルトのどちらかが闇落ちするんですが、あっさり戻ってくるのでちょっと拍子抜け。悪落ちのせいかイベントもちょっと少なく、割と恋心を強めにプッシュしてくるソプラに比べると影が薄い感じ。 |
火属性担当だが、それより光属性術の方が強いのでそっちメインでOK。回復術も使えますが効果が低いので、火力要員として運用するのが吉。 |
ソプラ
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アルトと同じくレイヴァリアの少女。ラクロス好きだけど誰とチーム組んでるんですかね…アルトはやってる感じじゃないし、必殺技ではラクロスシーンが拝めますが、チームメイトは全員人外だし…。恋は押して押して押しまくる、わかりやすいタイプなので結構好き。 |
弱点を突きやすい水と光の両方を使えるできる子。彼女も大器晩成型なのでじっくり火力を上げてあげましょう。 |
※画像は公式サイトより引用
というわけで、ちょっとばかし残念な出来でした。とはいえ、バトルパートはなかなかに出来が良く、シナリオをきちんとすれば化けるような気もします。この辺りはさすがフェリステラさんというべきか。しかしシナリオが全てを台無しにしているので、次回作を買うかどうかは考えます。
そうなんだよな…結局4年前とラインナップは変わってないですからね。