2017-07-01
【小説】マグダラで眠れVIII レビュー
ゼルダの伝説、水の神獣をクリアしました。神獣に乗り込む時のバトルは面白かったですねー。でも神獣内の謎解きはかなり難しかったです。こんなのがあと3つもあるなんて!楽しみすぎる。
先日仕事で空き時間が2時間ほどあったので、久々に小説読みましたー。この小説の前巻読んだのも、そもそもこの本買ったのも、1年以上前だ。
マグダラで眠れVIII
Yukkun20's Association Secrète
2017-07-01
ゼルダの伝説、水の神獣をクリアしました。神獣に乗り込む時のバトルは面白かったですねー。でも神獣内の謎解きはかなり難しかったです。こんなのがあと3つもあるなんて!楽しみすぎる。
先日仕事で空き時間が2時間ほどあったので、久々に小説読みましたー。この小説の前巻読んだのも、そもそもこの本買ったのも、1年以上前だ。
マグダラで眠れVIII
最大の危機を脱し、クースラ達は天使達による太陽の召喚により一夜にして滅んだという旧アッバスの町を目指す。街が再び滅ぶことを恐れる旧アッバスの責任者・サイラスは、太陽の召喚の謎を一部とはいえ解いてくれたクースラたちを歓迎してくれる。そして街の外れには、確かに巨大な大穴が空いていた。
街には受け入れられたものの、すぐにでも騎士団の追っ手がかかっておかしくない状況。そして騎士団に捕まれば、政治的取引の道具にされて二度と自由に世界を飛び回り、天使達の行く末を追いかけることは出来なくなってしまう。クースラ達は天使達の行く末を追いながらも、騎士団から逃れるための研究を続行する。
研究と仲間達との交流によりみたされた日々。しかし、突如現れた騎士団長アイルゼンにより、その日々は終わりを告げる。街はなぜ滅びたのか、天使達はどこへ行ったのか、そしてクースラ達の行く末は―
感想
第1部・完!ということでクースラ達の旅にも一段落付きました。支倉先生がだいぶ前から考えておられたオチということで、今回も支倉先生の手の上であっちへころころこっちへころころ転がされながら読むことが出来ました。科学的なおもしろさもさることながら、街が滅びた理由についての大どんでん返しは面白かったですね。それも単なるどんでん返しというだけでなく、クースラの計画も、フィルの目的も、アイルゼンのもくろみも、全てを繋ぐオチになっていたのは本当すばらしかったです。拍手喝采。
それから今回は、クースラとアイルゼンのやり取りが面白かったです。クースラはアイルゼンに捕まると殺されるか飼い殺しにされるかのどちらかだと思っていて、そのため先手を打って暗殺しちゃおうかとか言い出すんですが(それをアイルゼン本人に聞かれてしまうのはご愛敬)、アイルゼンはクースラを殺すつもりも飼い殺しにするつもりもないんですよね。あっさり好きに研究をして、その後は自由にすればいいとか言い出すわけです。もちろん嘘をついているわけではなく、それも彼なりの打算があってのことなのですが、その辺りの話が非常に理屈っぽく、かつ納得できる内容に仕上がっていて、本当に読んでいて楽しかったです。
人は、必ず他の者と関わって生きている。錬金術師が工房の中で社会と隔絶して真理を追い求められると思えるのは、その工房に金を出す者たちがそのように配慮しているからにすぎんのだ。
※239ページより引用
という言葉には考えさせられましたね。
さて、これで5年ほど楽しませていただいたこの小説も一区切りですね。やっぱり支倉先生の構成力はすばらしいと素直に思える作品でした。さて、次は「狼と羊皮紙」そして「狼と香辛料」ですね。こちらも早い内に読みたいとは思ってるんですよ?
2016-03-20
その内読みますと昨年10月に書いてから、どんだけかかっとるっちゅーの。
マグダラで眠れVII
クースラ一行が次に目指すのは、天使達による太陽の召喚により一夜にして滅んだというアッバスの町。そこで出会った書籍商・フィルは、クースラと同じく天使の伝説を追っており、さらにクースラが調べている異端審問官・コレド・アブレアの弟子だった。
アッバスの町には、シロクマを使った生け贄の儀式が行われており、フィルによると、その儀式は天使の伝説と関係があるのではないか―とのこと。儀式に用いられたシロクマが埋められた地面の土に何か秘密があるのではないかと考えたクースラ達は、早速その土を採取し、様々な物質と反応させて太陽の召喚を試みる。伝説をひもとき、ついに火の精霊を呼び出す「火の薬」の調合に成功するクースラ。しかし、その手柄を横取りし、火の薬を用いて世界を手中に収めようとする騎士団の密偵たちにより毒を盛られてしまう。命からがら逃げ出したクースラたちは町の有力者により匿われるが、密偵達が引き渡しの刻限として指定した時刻までは一晩しかない。
クースラは、自分のマグダラとは、仲間達との安穏とした生活であることを認め、それを守ろうと最後の実験に望むのだが―果たして太陽の召喚とは。
感想
今回もおもしろかったのですが、ストーリー的なおもしろさというよりは、科学的なおもしろさが前面に出てましたね。
「火の薬」はもちろん黒色火薬で、炭と硫黄と硝石(動物の死体の分解物)を混合することで作れます。これは僕も前提知識として持っていたので、シロクマの死体が出てきた時点で、「あ、今回のオチは火薬の爆発オチだな」と思ったわけです。
しかしさらにそこからさらなるどんでん返しを用意していたとは…さすが支倉先生です。おそらく最後にクースラ達が作ったのは、炭と太陽の欠片から作られた硝酸(※ところで炭素と硝石?から硝酸って作れるんですかね。そのあとの流れから硝酸としか思えないのでこう書いてますけど。教えて偉い人)と、硫黄と硝石から作られる硫酸を混ぜた混酸を、布(おそらくセルロースの割合が高い綿布)にしみこませて完成させたニトロセルロースだと思います(現代でも手品などでぱっと火をおこすときに使われていますね)。同じ材料でも扱い方次第で全く違った反応を引き出せるという科学の醍醐味がうまく現れていたように思います。
シロクマの肝が人体に有害だというのも初めて知りました。調べてみると、ビタミンA中毒になるそうですね。
もっとも、黒色火薬を作ってから数時間でニトロセルロースを作り出したのはいかにもご都合主義な感じはします。またクースラ達が暗殺されなかったのもたんに運が良かっただけなので(シロクマの肝などという毒性も致死量も不明なものを暗殺に使いますかね?しかもそのあとまんまと逃げられてるし)、全体のストーリー立ては若干荒さを感じたのは否めません。
とはいえ、それを差し引いても十分楽しめる1冊でした。しかしクースラの口から、
自分の中での世界というのは、狭い工房一つだけであり、広大な領土が欲しいわけではない。そこで静かに、誰にも邪魔されず、気の合う連中と実験に打ち込めればそれでいい。自分のマグダラの地は、そんなにも素朴なものだったのだ、と今ならよく分かっている。
※294ページより引用
なんて言葉が出るとは(実際には心の声ですけど)。
今巻ではウェランドとの関係を相当改善され、これまでのでこぼこパーティとは全然違う人間関係になっていますね。いよいよ終わりが近づいているのでしょう。時間で一区切り付くようですが、まだ完結ではないとのこと。これからどうなっていくのか楽しみです。8巻も既に購入しているので、その内読みます。
2015-10-11
旅行中に読みました。マグダラで眠れの最新巻もその内読みますよ。
少女は書架の海で眠る
書籍商を目指す本好きの少年フィルは、自身の所属するジーデル商会の命令で、仲間のジャドと異端審問官のアブレアと共にグランドン修道院を訪れていた。修道院の所蔵する貴重な蔵書を買いつけるという、書籍商としての初仕事に胸を膨らませるフィル。しかし、修道院の図書館で彼を待ち受けていたのは、本を憎む美しい少女クレアだった。クレアはフィルたちを追い返そうとするが、それは修道士たちが疫病のためクレアを残して全滅し、それが知られるとクレア自身も教会から放逐される恐れがあったからだった。
教会の権力闘争に興味のないアブレアは、フィルに蔵書目録を作るよう命じる。その作業をこなす中で、フィルはクレアとの関係を深めていく。教会の蔵書は、クレアの父が寄贈したものだった。本の収集に没頭した父に対し、複雑な感情を抱くクレアの気持ちをどうにか解きほぐしてあげたいと考えるフィルだったが、時間だけが過ぎていく。
そして、ついに教会本部から査察がやってくることになった。これ以上教会の秘密を隠し通すことはできない。フィルはクレアを連れて教会を脱出しようとするが、クレアは父の思い出が詰まった本たちと離れることが出来なかった。最後にフィルが思いつく、起死回生の一手とは―
感想
支倉先生の小説「マグダラで眠れ」のスピンオフ作品です。といっても「マグダラ」に名前だけ登場するアブレアが生きていた時代と言うくらいの繋がりしか無いので、「マグダラ」は読んでなくても全く問題ないです(「読んでいればより楽しめます」というレベルですらない)。
今回は主人公もヒロインも年齢が低いので、その分恋の駆け引きとか命を賭けて貫くべき信念といったテーマは少なめになっています。クレアも達観しているキャラではなく、年齢相応の無茶なことも言ったりするキャラですし、主人公も人生を捧げる目標を探している途中なので、他作品に比べると感情移入しやすいかもしれません(その分キャラとしての魅力は薄めですが)。ストーリーが短いので、ヒロインの魅力が十分出来る前に終わっちゃった感もなきにしもあらず。続編が出たら是非読んでみたいですね。
アブレアはなかなかの狂人として描かれてましたが、脇役としての枠から決して出ることなく存在感を放っているのはなかなか。後世に名を残すような人はこんな感じだろうなぁと思わせられる説得力がありましたね。彼の、そしてフィルの本に対する考え方には色々考えさせられるところがありました。僕もお金持ちになったらでっかい書庫を作りたいですねぇ。
蔵書に隠された秘密や最後のオチについてはギリギリ予想出来るくらいでしたが、ご都合主義にならない程度に綺麗にまとめられていてさすが支倉先生だなぁ…と感心しきりでした。
私もそういう時期がありましたよ。本を読み終わるのがもったいなくて、面白そうだと分かっている本は開くことすらできなかった。始まらなければ、終わることもない、と真剣に思っていたのですよ。ですが、ある日、本にはその先があると気づいたのです。
※161ページから引用
2015-02-15
本日帰ってきましたけど、新幹線が沿線火災で止まって大変でした。おかげでこの本を読み切れたのですが。
マグダラで眠れVI
ニールベルクでの騒動が一段落し、クースラ達はフェネシスの一族やオリハルコンについての情報を持っていると思われる異端審問官アブレアの足跡を追って、ヤーゾンという街にやってきていた。情報収集をしているうちに、ヤーゾンでは、「天使がもたらした灰をまくと、金銀が生まれ、それによってヤーゾンは建てられた」という伝承を知る一同。アブレアはその伝承にお墨付きを与えていたため、クースラ達はその線から調査を開始する。
折しもヤーゾンでは、城壁の中に澄む職人達と、城壁の外に住む硝子職人達とが、燃料となる森を巡って日に日に対立を深めていた。伝説の灰の情報を求めて入った薬種店で、クースラは店番をしていた少女ヘレナから硝子職人たちに宛てた手紙を託される。「街の人間が襲ってくるから逃げろ」…それは、硝子職人たちというより、彼女が親しくしている一人の青年リヒトに向けて書かれたものであることは明らかだった。
クースラは硝子職人達が伝説の灰に関する情報を持っていると聞いてそれを引き受けるが、得られたのはかつて伝説の灰をよみがえらせようとした硝子職人達が副産物として得た惚れ薬の情報だけだった。その情報を記した秘伝書の解読に取りかかるクースラ達。そんな中、リヒトがヘレナに会うために町中へ進入したことで騒ぎが起こる。そこに居合わせたクースラは否応なく騒ぎに巻き込まれていくのだが―
感想
いやはや今回も面白かったです。硝子職人達と街の職人達が燃料となる木材を巡って対立しているけど、硝子職人は南方の貴族の庇護を受けているので、事を荒立てるわけにはいかない、しかしこのままだと燃料を確保できる街の中にも凍死者が出る―というパワーバランスを軸に、ロミジュリ的な展開を絡めつつ、クースラとフェネシスの関係も進展させてきましたね。いつも思うけど支倉先生はこういう複数の話しをうまく絡ませて最後に一気に収束させるという話の展開がうまいんですよねぇ。
前巻でも言いましたけどクースラもずいぶん丸くなりました。自分が得るリターンとリスクをきっちり計算して、前者が上回らない限り手を出そうとしない彼が、まさか共感を理由にただ働き(まぁ実際には違いますが)をする日が来ようとは。1巻の頃には考えられなかったです。フェネシスも前回女を見せ、すっかりヒロインポジションを固めてしまいました。今回は「惚れ薬」が題材で、いくらでも二人の中を引っかき回せたと思うんですけど、それをあえてせず、最終的には惚れ薬なんて真の愛の前にはどーでもいいのさオチに持って行っているのはさすがだと思います。
でもクースラが夢よりも自分を選んでくれたことが前回明らかにしちゃったせいで、すっかりフェネシスの手玉に取られていて、もはや勝てるのが「大人の」話題だけというのはちょっと寂しい。これまで通りあたふたしているフェネシスも好きなので、もうちょっとクースラにはがんばって欲しいところです。そういえば前巻の終わりでは、ウェランドやイリーネがクースラ達と別れてしまうのではないかとちょっと心配していましたが、普通に珍道中ご一行でちょっとびっくりしました。深読みしすぎたか…
今回のネタについては作者の詳しい解説がありませんでしたが、おそらく伝説の灰というのは金や銀を灰吹法(融解した鉛に金鉱石などを投入し、不純物を鉛と一緒に酸化させて金などを取り出す精錬法)で精錬した場合に出る酸化鉛のことだと思います。酸化鉛を原料に混ぜて加熱することで硝子の融点が下がるのは割と昔から知られていることなので(確か現代でもクリスタルガラスはこの方法で作ってるはず)、多分間違いないかと。
2014-04-15
ツンデレ!ツンデレ!な5巻です。
マグダラで眠れⅤ
クースラたちの活躍により、騎士団は包囲された火山の街から逃れることに成功。他の騎士団の根拠地となっている港町ニールベルクに逃げ込むことが出来た。ニールベルクも包囲はされているが、脱出の際に活躍し女神と祭り上げられたフェネシスが到着したこともあり、しばらくは持ちこたえられそうな雰囲気だった。クースラたちは早速街の文献の調査を行い、かつてこの街にいた異端審問官コレド・アブレアが、フェネシスの一族やクースラの求めるオリハルコンについての情報を持っている可能性が高いことを突き止める。
その頃、ニールベルクではひとつの問題が持ち上がっていた。戦士たちに神の祝福を告げる教会の鐘楼の製造がうまくいかず、何度作っても割れてしまうのだ。錬金術師として鐘の製造を命じられたクースラたちは失敗した場合の責任追及を恐れて及び腰だったが、ある事件をきっかけにそれから逃げることは出来なくなってしまう。そんな中、フェネシスは街の人々を納得させるため、自分が人柱になると言い出したのだが―
感想
3~4巻あたりは命の危機が迫りすぎていて、クースラの本来の目的についての進展があまりなかったのですが、ここへ来て大きく物語が進展しそうですね。
今回は前巻のような大スペクタクルはなく、おおむね街の中で話が進むのでちょっと地味でしたけど、その分クースラとフェネシスのいちゃいちゃに集中することが出来ました。だっこしたり膝枕したり、すっかり恋人関係じゃないですかーどうしてこうなった!
今回クースラたちは、知人を助けるために奇跡を起こし、それによって窮地に陥ります。
一度目の奇跡の後には二度目の奇跡を。二度目の奇跡の後には三度目の奇跡を。
そして、いつか応えきれなくなり、人々は身勝手にも思うのだ。
彼らは出し惜しみをしているのではないか?
いや、そもそも我々を騙していたのではないか? と。
※301~302ページより引用
という群集心理が危機を招くわけです。
しかしそれを救ったのは、これまでクースラたちを単なる便利な使い捨ての道具としてしか見ていなかったアイルゼンが、クースラたちの起こした奇跡を見て考え方を変えていたからだった、というのもちょっと考えさせられる展開でした。
次回からはさまざまなしがらみから解き放たれたクースラたちの新しい旅が始まります。支倉先生によると、全体構想の半分くらいまで来たとのこと。本当に存在するかも分からないものを探して旅を続ける、というのは、前作「狼と香辛料」と全く同じなので、うまく差別化していってほしいなぁと期待しています。しかしウェランドとイリーネとはここでお別れなんですかねぇ。特にウェランドはイリーネやフェネシスとの掛け合いがおもしろくなってきたところだったので残念です。しかし1巻のときと比べるとずいぶん人間として丸くなってるなぁ。
2013-10-14
支倉先生、ネットで色々言われていますけど気にせず頑張ってくださいね!の最新刊。ちなみに読んだのは旅行中だから…
著者:支倉凍砂
レーベル:電撃文庫
価格:570円(税別)
クラジウス騎士団と共にカザンの街に到着したクースラたち。直前にカザンを治めるラトリア女王が改宗したとの知らせがあり、異教徒討伐を建前にしている騎士団には同様があったものの、入植は順調に進んでいた。クースラたちも異教徒の技術を探して、町に残る文献を読みあさることにする。そこにあったのは竜の伝説と、その存在を彷彿とさせる神殿だった。
クースラたちは新しい工房も手に入れ、すべてが順調に思えた。しかし突如、街は敵軍に取り囲まれる。カザンを追い出された者の反撃と思いきや、これは権力を得すぎた騎士団を潰そうとする、教会の差し金だった。クースラは全員が生き残るため、フェネシスたちを街に残し、自らは騎士団と共に街を脱出することに賭けることにするのだが―
感想
3巻も面白かったですけど、4巻はさらに面白かったですね。ようやく支倉節全開という感じです。かなり切迫したシチュエーションももちろん引き込まれましたけど、それと並行して、竜の伝説、フェネシスの一族の行方、そしてクースラのフェネシスたちに向ける思いの変化などのストーリーが同時並行的に進んでいき、最後に全てがひとつに収束する物語運びはさすがでした。僕の中ではこれで、この作品は「狼と香辛料」に匹敵するものになったと思っています。
次巻は厳しい逃避行が描かれるのかな。イリーネさんもすっかり一行に馴染んで、会話の掛け合いも面白くなってきました。数ヶ月先が楽しみです。
2013-06-12
榊ガンパレも早く読みたい!のですが先にこちらを。だんだん話が面白くなってきました。
著者:支倉凍砂
レーベル:電撃文庫
価格:619円
紆余曲折を経てカザンの町への入植団にへの同行を許されたクースラたちは、ともに街を出る予定のイリーネと共に、グルベッティを離れる準備をしていた。旅慣れているフェネシスは、初めてクースラにものを教える立場になったことに少し浮かれる。しかしそんな中、ウェランドは女遊びが祟り、街の権力者の罠にはまってしまう。このままでは入植団には加われず、それを免れるにはウェランドが錬金術士であることを証明するしかない。クースラは自業自得だとあっさり見捨てて旅立とうとするが、フェネシスの「仲間を大事にしたい」という熱意に打たれて、ウェランドを見事に助けだす。しかしクースラがウェランドを助けたことを知らないフェネシスは、その後もクースラに冷たくあたるのだが―
感想
1巻と2巻は世界観説明にかなりの紙幅を裂いていた上に登場人物もみんな尖っていたので、ちょっと退屈に感じる部分もあったのですが、今回はかなり面白かったですねー。支倉先生らしい言葉遊びと、登場人物達の複雑に入り組んだ思惑が最後に一気に解けていくところは見物でした。やっぱりヒロインは守られるだけじゃなくて、こういうしたたかなところも見せて欲しいです。今回でようやくヒロインと主人公が対等な目線で話せるようになったのではないかな。新キャラのイリーネも加わり、これからどんどん面白くなってきそうです。そして主人公も、決して私利私欲の打算だけで生きているわけではない(もちろん決して善人ではないのですが)ところを見せてくれて、男が上がったように思います。
次巻も大きな事件が起きることが既に呈示されています。次の発売日が待ち遠しいです。
2013-02-11
ようやく去年の年末に購入した小説を半分程度消化。時雨沢作品か榊ガンパレの新刊が出るまでに頑張らねば。というわけで今日はこちら。
著者:支倉凍砂
レーベル:電撃文庫
あらすじ
戦争の最前線が、今いるグルベッティの街からカザンに移動しようとしていることに気づいたクースラとウェランド。それは2人の工房が技術の最前線から離れてしまうことも意味していた。そんな折、伝説の金属「ダマスカス鋼」の話を聞いた2人は、それを再現することで入植者に同行する権利を得ようとする。どうやらその鍵は、若き鍛冶屋組合の組合長イリーネが握っているようなのだが、イリーネはその秘密を明かそうとしない。クースラはフェネシスを連れて街の記録の精査に取りかかるのだが―
感想
うーん、つなぎの話という感じでちょっと盛り上がる感じではなかったですかね。なんというか、「よく分かるこの世界の錬金術」みたいな感じ。
クースラは1巻から、「目的のためには手段を選ばない」人物として描かれているんですけど、1巻ではウェランドが割とキツイ性格で描かれていることもあって気になりませんでした。でも2巻はちょっと感情移入が難しくなるようなエピソードがあるのでうーん。
それに狼と香辛料では、ロレンスとホロはほぼ同格だったんですが、クースラとフェネシスは完全に保護被保護の関係で、クースラにブレーキをかける役がいないというのもクースラの暴走に拍車をかけている感じ。今回出てきた新ヒロイン?のイリーネもうまく手玉に取っちゃいましたしね。
とはいえ、これからはおそらく物語が大きく動きそうですし、イリーネもクースラたちに付いてくると思うので、人間関係にもちょっと変化があるかも知れませんね。そういう意味では次巻に期待です。フェネシスはもっと前に出て!
2012-09-24
旅行中に読んだ本が溜まっているのでぼつぼつレビューします。
「狼と香辛料」の支倉凍砂先生の最新作、「マグダラで眠れ」です。
狼と香辛料はホロのかわいさと、商人がその知恵を武器に戦うというちょっと変わった設定で大成功した小説ですが(僕も好きです)、果たして新作は…
今作の絵師は鍋島テツヒロ先生です。
ネタバレがあるので注意。
※サモンナイト2関係
プレイ日記第18話を追加しました。計算上では今月末までに1週目が終わる…はず。だが2週目は…
騎士団、教会、商工会が権力を3分する時代。
騎士団に雇われた有能な錬金術士クースラは、「マグダラ」と呼ばれる錬金術士の真理を追及したことが原因で教会から睨まれ、錬金術士ウェランドと共に、前線の町グルベッティの工房に送られる。
クースラたちは研究をしながら、不審な死を遂げた前任者トーマスの研究成果を探そうとする。そこに、教会から派遣された修道女フェネシス(表紙の少女)が現れる。彼女は監視者と名乗り、クースラ達の研究に同行するようになる。次第に交流を深めるクースラとフェネシス。フェネシスは自分の出自ゆえに教会のいいなりになっている自分に疑問を抱くようになるが、その間にトーマスの研究成果を狙う教会、そしてトーマスを殺害した黒幕の手がクースラ達に迫る。果たして3人の運命は―
レビュー
今回のヒロインもいいですねぇ。最初はホロに比べるとずいぶん影の薄いヒロインだなと思っていましたが、中盤以降はしっかり存在感を出してくれました。ただ、狼と香辛料ではホロが一番目立ってましたが、こちらはあくまでクースラが主役で、フェネシスは庇護される役割からはみ出ることはありません。最後は正統派ファンタジーらしく、王子さまがお姫様を救い出してハッピーエンド。やっぱりこういう王道ストーリーはいいものです。
とはいうものの、世界観の緻密さ、錬金術の設定の作り込み、そして終盤の大どんでん返しはさすがに支倉先生と思わせる展開でした。最後まで完全に作者の罠に振り回されてしまいました。
すでに二巻の執筆に入っているとのこと。今後も買っていきたいと思います。狼と香辛料が好きなら、間違いなくオススメできる一品です。
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