2024-06-23
【ゲーム】ペルソナ5 タクティカ レビュー
ペルソナ×SRPGという好物てんこ盛り。
ペルソナ5 タクティカ
プラットフォーム | Xbox Game Pass / Xbox Series X|S / Xbox One / Windows / PlayStation®5 / PlayStation® 4 / Nintendo Switch™ / Steam | |
ジャンル | シミュレーションRPG | |
価格 | パッケージ版:通常版7,920円(税込) ダウンロード版:通常版7,920円(税込)/豪華版11,770円(税込) |
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公式 | ペルソナ5 タクティカ【P5T】|公式サイト | |
プレイ時間 | 51時間(トロコン・2周弱) |
ストーリー
- 3年生の卒業式が迫ったある日。心の怪盗団の面々がルブランに集まっていると、突然大きな地震が起こり、店のドアの先は異世界に繋がっていた―パレスとは似て非なる世界で謎の武装集団に襲われた主人公達は、革命家を名乗る少女エルに救われ窮地を脱する。彼女はこの理不尽な世界を革命するために活動しているらしい。敵に捕らわれた仲間を救うため、元の世界に戻るため、そしてエルのために、心の怪盗団は戦いに身を投じていく―
- ペルソナシリーズの外伝作品ではおなじみの異世界転生からはじまる物語ですが、決してマンネリにはなっておらずストーリーはよく出来ていたと思います。今作は革命家・エルと、日本の若き政治家・春日部統志郎が仲間に加わりますが、そのなかでも統志郎をしっかりと中心に据えた物語になっていて、かなりの尺を使って彼の信念や葛藤などが描かれていました。特に終盤に統志郎が覚醒するシーンは熱かったですね。
- まあ最後もおなじみのちょっぴりもの悲しい別れが待っているのですが、そこも含めてきれいにまとまったストーリーでした。
- ちなみにDLCでは本編と独立したストーリーが展開されます。こちらは主人公・明智・かすみの3人が異世界に招かれ、そこで出会った少女・ルカと共に、暴虐を尽くす芸術家・ゲルニカと戦うことになり、最後もちょっともの悲しいエンディングというよく似た構造になっていますが、こっちはテーマが本編とは全く異なるものになっていて、普通に短編作品として完成度高かったです。有料ですがぜひプレイしてみてください。
システム
- SRPGなので、基本的にはストーリーパートと拠点パートとSLGパートを繰り返して進んでいきます。
- ストーリーパートはあまり特筆すべきことはないんですが、SDキャラの出来が良く、またP5本編で言うとエンディングに近い時期という事もあって仲間達の絆もしっかり深まっており、いつもの乗りでみんながわちゃわちゃやっているのを楽しむことが出来ました。また拠点パートでも「TALK」というキャラクター達による、本編を少し離れた短めの会話劇を楽しめるようになっていました。
- 拠点パートでは、戦闘のための準備を整えることが出来ます。
- 今回のキャラクターはレベルの他にスキル獲得でも強化出来るようになっていて、レベルアップ(レベルは全員共通)やサブクエスト、前述のTALK閲覧なので貯めたGPを消費してスキルを獲得していきます。スキルはキャラクターごとにバリエーションがあり、それでキャラクターごとの差別化に一役買っていました。またいつでもスキルを消去してGPに戻すことが出来るので、敵やマップに合わせてスキルを付け替えたりも余裕です。この点もそうですが、とにかく本作は取り返しが付かなくなる要素がしっかり排除されていて、安心してプレイ出来ました。
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- ペルソナなのでもちろんベルベットルームもあり、ペルソナの合体や武器の精製を行うことが出来ます。P5本編ではペルソナたちをギロチンに欠けて合体させるというなかなかにひどい仕様でしたが、今作はペルソナたちを高温で溶かして鍛冶につかうという更にペルソナに優しくない仕様となっていますwさすがラヴェンツァ殿。本編ではあまり活躍出来なかったラヴェンツァの意外な性格が見えたり、合体事故でアフロになったりと、イゴール不在もあってこれまでとは違うベルベットルームを楽しめます。
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- 今作は全員メインペルソナの他にサブペルソナを1体装備出来るようになっています。ペルソナ合体で生まれたペルソナは、元のペルソナが持っていたスキルを1つ選んで承継出来るので強力なペルソナも作れる…と言いたい所ですが、今作はステータス強化もなく、生来持っているスキル2つの善し悪しで強さが決まりますし、ぶっちゃけ難易度HARDでも苦戦する敵はいないはずなので、あまり意味はないですね。とはいえこれはそんなに悪くないです。ストーリーの長さに比べてペルソナの量が多く、次から次にペルソナを乗り換えていくの繰り返しなので、一体をじっくり使って強化して…という必要がないですからね。
- また本編の他に、QUESTというエクストラステージをプレイすることも出来ます。こちらはパズル的な側面が強く、例えば1ターンで敵を全滅させたり、荷物を特定の場所に運んだり、特殊なギミックがあったりと、本編とは少し違うバトルを楽しむことが出来ます。これも箸休め的に良かったですね。
- あとちゃんとスタイリッシュなOPが搭載されているのも評価したい。
キャラクター
- とにかく統志郎とエルにスポットが当てられていました。
- 統志郎は未来を嘱望される政治家ですが、記憶の大部分を失った状態でこの異世界に来ています。この奇妙な世界が統志郎の心を反映していることは比較的早い段階で開かされるのですが、彼の抱えている問題やトラウマなどは物語を進めるうちに少しずつ明らかになるようになっています。当初は戦いからはすぐ逃げるし、政治家として心の怪盗団の活動についても快く思っていない彼でしたが、やがて自分の意思で仲間達を助けるようになっていきます。彼がエルのために敵の眼前に飛び出した時、自己の最大のトラウマと向き合いエルを救い出した時など、見せ場もしっかりありましたね。
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- エルはこの異世界の住人です。ということはやはり統志郎の心と何か関係があるはずなのですが、その正体が明かされるのは終盤です。しかしその正体はなかなかはっとさせられるもので、また凄く納得が出来る答えになっていました。終盤に彼女が覚醒したシーンは本当に名場面だと思います。性格的にもちょっとはすっぱで、無鉄砲で、それでいて仲間想いの彼女は、一緒に戦ってあげたいと思わせるに十分な魅力を持っていました。
- 今作は心の怪盗団の出番は比較的控えめでしたが、ただそれぞれが統志郎の境遇に感情移入エピソードを持っていて(例えば統志郎は子どもの頃母を亡くし、そのことで自分を責めていますが、それは双葉の境遇と重なりますし、また学生時代に理不尽な教師と戦った経験があり、それは竜司や杏と重なります)、「大人」で「政治家」(=P5本編の最後のパレスの主と同じ職業)である統志郎を自然と仲間として受け入れられるようになっていたのは良かったと思います。
- 主人公はあまり喋りませんが、選択肢で存在感出してましたw
- 敵役も分かりやすい悪玉が多く、しっかりカタルシスが得られる、P5らしい相手になっていました。最後の敵もスケールでかい。
戦闘
- SLGパートは、ターン制・スクエア制のシミュレーションになっています。
- まず、出撃人数はわずか3人(4人のステージもある)という一風変わったバトルになっています。味方パート内では3人を自由な順番で動かすことができます。移動以外の行動(近接攻撃、射撃、ペルソナ発動、待機など)をとるまでは移動範囲内で自由に移動出来、全員が移動以外の行動を取ると敵のターンになります。
- P5本編では、相手の弱点を突くことで1moreを獲得したたみかけるのが基本的な戦い方でしたが、本作もそれに倣っています。
本作は壁や障害物に隣接して待機することで「カバー」と呼ばれる状態になり、この状態では攻撃を受けてもダメージが軽減され、ダウンも取れません。しかし壁から引き離したり、あるいは状態異常にすることでカバーが解除され、その状態で攻撃を当てることで1moreをとり、敵をダウンさせると同時に再度行動が可能になります。今の説明から分かるとおり、通常1moreをとるには2手必要ですが、味方は3人しかいないので、どういう順序で行動するのかが結構重要になります。
- また1more状態になり、かつ残りの二人の位置とで描く三角形の中にダウンした敵を入れることで、その範囲内の敵全てに大ダメージを与える総攻撃を発動出来ます。
- このゲームの一番の問題点がここで、どうしても戦闘がマンネリになります。総攻撃がダメージソースとして優秀すぎるので、常にそれを狙って動くことになるからです。すると上記の仕様から、そうするとまず1人目でカバーを解除し、2人目で1moreをとる、1人目はもう移動出来ないので、2人目と3人目をいい位置に移動し、2人目で総攻撃、最後に3人目が適当に行動してターン終了、という流れになりがちです。製作者側もそれが分かっているのか、ギミックを用意したり、特殊能力を持つ敵を入れたり、ボス戦はシステムをガラッと変えたり、と色々創意工夫して下さっているのですが…
- またユニットごとの差別化も薄めなんですよね。これはP5をモチーフにしている以上仕方ないのですが、どのキャラも近接攻撃と射撃とペルソナという攻撃手段を持っていますし、サブペルソナも自由に装備出来るので、ピーキーなキャラはいないんですね。その中でもスキルなどで差は付けたりしてるんですが、どのキャラを使ってもほぼ同じムーブをするようになってしまう感じでした。一応連続で出撃しないとパラメーターが上がる仕様があり、それによりいろんなキャラを使う動機付けは出来ているのですが、それに頼らないと倒せない敵がいるわけでもなく、結局素の性能が優秀なキャラ(確定ダウンが取れる主人公、移動範囲が広い祐介、射撃が広範囲高威力の春など)か好きなキャラだけ使うことになりそう。
- ただこのあたりは個人の好みなのかも知れません。yukkun20はピーキーな性能のユニットをいろいろうまく組み合わせて戦術を練るタイプのSRPG(最近だとトライアングルストラテジーとかユニコーンオーバーロードとか)が好きなのですが、1戦闘だけで1時間とか普通にあるからな…今作は1面あたりの戦闘時間が短く、数ターンで決着が付くので、サクサク感はあるので一概に悪いわけではないです。ソシャゲとかと相性良さそうなシステムだと感じました。
- ちなみにDLCのバトルパートも基本的には同じですが、床をペイントしていくという本編では登場しないギミックがうまく使われていて、違うプレイ感覚を楽しめました。
総評
- yukkun20の好きなペルソナとSRPGのコラボと言うことで、発売前の期待は非常に高かったのですが、途中で戦闘にマンネリを感じるようになったためクリアまでに時間が掛かってしまいました。ゲーム自体の評価とは関係ないのですが、トロコンには2周目の終盤までプレイが必要というのもちょっと昨今の風潮には合ってない気がします。
- とはいえ、「カバー」という新しい概念をSRPGに持ち込み、ペルソナらしさを反映した戦闘システムには驚かされるところもありました。ペルソナはこれまでもDRPGやアクションなど、本編とは異なるジャンルのゲームにも挑戦していますが、「ペルソナらしさ」を大事にしているところはさすがだと思います。
- またストーリーはyukkun20がプレイしたペルソナの外伝作品の中でも一二を争うくらい良かったと思います。これまで心の怪盗団は過去作の主人公パーティに比べると若さ故の暴走も時々見られたんですけど、本作では大局的な視点のある統志郎がブレーキ役になり、怪盗団にも増して無鉄砲なエルがいるおかげで怪盗団側がブレーキを踏まざるを得ない場面もあったりして、間接的に怪盗団の成長も描かれたように思います。
- 総じて全体としては良作というところでしょうか。もし同じシステムの続編が出ればもちろん買いますと言えるくらい面白かったです。