2024-08-21
【ゲーム】BAR ステラアビス レビュー
日本一ソフトウェア×SRPGというおなじみのレシピでありながら異色作。
BAR ステラアビス
プラットフォーム | PlayStation®5/PlayStation®4/Nintendo Switch™ | |
ジャンル | シミュレーションRPG | |
価格 | パッケージ版/ダウンロード版 7,920円(税込) | |
公式 | BAR ステラアビス | 日本一ソフトウェア | |
プレイ時間 | 104時間(トロコン) |
ストーリー
- 主人公は、ある日風に乗って飛んできたチラシに導かれ、ひっそりたたずむ「BAR ステラアビス」にやってきた。疲れ切っていた主人公はお酒を飲むと夢の世界に落ちてしまう―目ざめるとそこは、幻想的な風景が広がる異世界であり、主人公は何者かに顔と腕を奪われてしっていた。出会った謎の生き物「ティプシィ」に導かれ、主人公はBARと異世界「ヨイの世界」を往復しながら、顔と腕を奪った犯人を追うのだが―
- ということでなにやらミステリ調で始まった日本一ソフトウェアのSRPGです。メインストーリーはバーと異世界の中で進行し,登場人物は主人公とティプシィとバーのマスター、それにバーと訪れる常連客くらいとこぢんまりしています。しかし常連客の中から裏切り者を探すところから始まり、中盤で大きなどんでん返しがあって最後は―というきちんと起承転結を踏まえた構成になっていて、大変面白かったです。特にバーのマスターの正体は謎だらけで、その正体が明かされていく過程は、彼女を知る常連客の物語ともリンクしていてとても引き込まれました。
- それと並行して、常連客たちとの交流がサブストーリー的に描かれます。常連客達は最初は人当たりが良く、新参者の主人公にも優しくしてくれるのですが、やがてその隠されていた本性が明らかになっていきます。彼らは全員「ヨイの世界」の常連で、ヨイの世界を探索する時には心強い味方になってくれます(要するにパーティキャラです)。が、「ヨイの世界」は心の欠けた人間しか来られないという設定があるので…。
- 主人公はいわゆる無口系で、常連客との交流と言っても基本的に「肯(うなずく)」「否(首を横に振る)」「笑(微笑む)」「疑(首をかしげる)」「酒を飲む」くらいのリアクションしかしないのですが、そんな中どうやって常連客達の心の闇に迫っていくのか…というのも見所の一つになっています。
システム
- ゲームはバーを拠点に、各ダンジョンに出撃していき、その合間でメインストーリーが進行する感じになっています。
- 拠点パート
- 拠点パートでは、マスターやバーの常連客と会話をして関係を深めることができます。
- 主人公は基本的に台詞がなく、相手の話に前述の5つのリアクションを返すことで相手からの印象(画面下の◆)が上下します。一連の会話では2つか3つのチェックポイントがあり、印象が一定の条件を満たしていると、話が続いていき、満たしていないと会話が中断してしまいます。最初の頃はうんうんうなずいていれば相手も気持ちよく話を続けてくれるのですが、途中からはだめなことはだめとはっきり言ってあげないといけない場面もあったりして、そのさじ加減が難しいですね。とはいえ会話は何度でも挑戦できますし、サイコパスのような感情が全く読めないキャラがいるわけではないので、会話が続けられずストーリーが全然進まない―ということはありませんでした。
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- 常連客は皆、探索パートで仲間にすることができるのですが(誰が登場するかはランダムですが、最後にお酒を飲んだ客が登場しやすい)、関係を深めると仲間になる時の攻撃性能やステータスが強化されるようになっています。
- またここは「バー」ですので、もちろんお酒も大事です。どういうシステムなのか、ここのお酒は最初注文する時にお金を取られますが、一度注文すると以後無料になります。ほかにお金の使い道はほとんどありませんし、どんどん新しいお酒を解放していきましょう。お酒は300種類以上あるのですが、そのほぼ全てが実在のカクテルで、ゲーム的な設定以外のフレーバーテキストも充実しています。yukkun20はお酒をほとんど飲まないのですが、プレイしているだけでめくるめくカクテルの世界に誘われました。
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- 解放したお酒は、常連客と会話をする時に注文することができます。飲んだお酒によって、その後ダンジョンに入る際に役立つ効果を付けることができます。ただ完全な効果を得るには、お酒を飲み干さなければいけません。会話の合間に飲んでいくのですが、一気に飲むと酔いが回って会話を続けられなくなってしまいますし、相手が質問している時に飲むと「話聞いてないでしょ!」みたいに怒られちゃうので、会話を楽しみつつ、質問に返事しつつ、お酒も楽しむ、そんな空気を読んだ振る舞いをするのもなんか楽しいんですよね。総じてバーの大人っぽい雰囲気がうまくシステム面に落とし込まれていたと思います。
- 探索パート
- お酒を飲んで必要なスキルを得たら、ダンジョンに乗り込みましょう。ダンジョンは自動生成で、基本的に部屋が3~10程度繋がった構造になっています。ダンジョンにはモンスターが徘徊しているほか、装備を強化したり、アイテムを増やしたり、ステラ(スキル)を獲得したりできる役立つ施設も点在しています。攻略ルートもある程度選べるようになっていますし、特定の施設が出やすくするお酒もあるので、攻略目的なのか、アイテム強化目的なのか、そのときどきに合わせた構造のダンジョン攻略を楽しめます。
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- 各キャラクターは、威力や消費MP、攻撃範囲が異なる3つの攻撃方法を持っています(これを「ステラ」と言います)。探索中にレベルアップしたり、強敵を倒したりする度にランダムで新しいステラがもらえて、それを装着することで、攻撃の威力を上げたり、追加効果を付けたり、攻撃範囲を変えたりすることもできます。どういうステラが出てくるかはランダムなので、ある程度装備が揃って攻略が安定してからも、ステラの取捨選択で悩んだり、強力なステラが出るかで一喜一憂したり、そういうどきどき感がありましたね。
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- ステラはそれぞれ13星座(黄道十二宮+海蛇座)に属していて、同じ星座のスキルを偶数個装着すると星印という追加効果を得ることができます(↑のスクリーンショットだと、獅子座ステラを6つ付けているので、「味方ユニット非隣接時、能力アップ」という追加効果が発動している)。なのでどの星座のステラを集めるかも結構悩ませてくれます。またうまく組み合わせることでコンボになる(例えば「ダメージに応じてバリアを張る」ステラの後に、「バリアに応じて固定ダメージを与える」ステラを組み合わせるなど)ものもあり、うまく決まると快感です。
- ヨイの世界をクリアすると(あるいはHPが0になると)、強制的にステラアビスのトイレ送りとなり(酔っ払って眠った挙げ句トイレで目を覚ますとかだめな大人すぎる)、レベルもステラもアイテムも全て失ってしまいます。しかし装備しているアイテムだけはなくならないので、いいアイテムを装備したり、装備にいいスキルを付けてあげたりすることで少しずつ強くなっていきます。
- システムは使いやすくてスタイリッシュで、ストーリーとの関連性もよく考えられていたものでとても良かったです。仲間の装備は仲間が加入している間でないと脱着できない、という点だけが不満かな…(ヨイの世界から帰還するとパーティも解散するので、仲間の装備は次にパーティに加入する時まで回収できない。要するに装備の使い回しがほぼ不可能)
キャラクター
- 常連客は一癖も二癖もあるキャラばかりなのですが、現代社会でもありそうな問題をうまくキャラクター性として取り込んでいて、だめな人だなぁ…と思うことはありますが不快になるようなキャラはいませんでした(カジさんはちょっと苦手なタイプですが…)
- 例えば、現役大学生のレオナという女性は、バーに来た主人公に最初に声を掛けてくれた気の利く女性です。人当たりも良く、就職活動も頑張っていて好感が持てます。
- が、会話を続けているうちに世の中の理不尽さに怒りを感じていることが分かってきます。それくらいならいいんですが、やがてその正義感が暴走して、犯罪をしているとおぼしき女性(それもまた常連客の一人なのが闇深ですが)をSNSで晒して炎上させてやろうとか言い出します。
- 主人公はそれを止めようとして一時はめちゃくちゃ険悪な雰囲気になったりもするのですが…その先どうなるかめっちゃ気になりませんか。
- yukkun20の一押しキャラは、大学生(休学中)で「キャス」という名前で配信をしている少女です。最初は配信者らしくテンション高く主人公に絡んでくるのですが、次第に幽霊が見えるとか、ストーカーされているとか、なんだか話が変な方向に。
- 最終的には彼女は心の病だったことが判明するのですが、そこからどう立ち直っていくのかもまた(ご都合主義ではなく)きちんと描かれていて、応援してあげたくなりました。
- その他、「そりゃお酒の世界に逃げたくなるのも分かるわ…」な人たちが目白押しですが、その悩みもバラバラで、どの人にも共感できる部分がありましたし、全然マンネリ感とかありませんでした。このサイドストーリーを読むだけでもこのゲームプレイした価値がありますよ。
戦闘
- 探索パートはシンボルエンカウントとなっており、敵シンボルに接触すると戦闘になります(シンボルは主人公よりも移動速度が遅いか動きがパターン化されているのでかわそうと思えばかわわせますが、油断するとうっかりぶつかってしまうこともあります。その辺りのバランスもなかなかでした)。
- 戦闘はターン制のSRPG方式で行われます。味方は最大3人、敵も数体程度でマップも狭いため、1戦闘はあっという間です。レベルアップでステラを獲得してキャラを強化しないとクリアがおぼつかないため戦闘回数が多くなりがちですが、戦闘はサクサクです。
SRPGだと、キャラクターの移動先を決める→決定→キャラクターの行動を決める→決定みたいな感じでどうしてコマンド数が多くなりがちですが、本作ではキャラクターを十字キーで任意の場所に移動させ、敵の方を向いて3つの攻撃方法それぞれに割り当てられたボタンを押すだけで行動が完了するようになっており(うっかり敵が攻撃範囲に入ってない場合は警告が出る)、すごくテンポがいいです。SRPGというよりコマンド式のRPGに近いプレイ感覚でした。
- ただ戦闘難易度は結構高く、ザコ戦も油断をすると結構死ねますし、ボス戦は本当に厳しく、初見殺しも多かったです。yukkun20は十分楽しめる範囲でしたが、間口を広げる意味でも難易度選択があってもよかったのでは…と思いました。特に本作は死ぬとダンジョンの最初からやり直しなので、頓死した時のショックも大きいのです。
総評
- 最近SRPG成分が不足しており、ゲームの雰囲気と日本一のSRPGなら何かあるかも知れない…と思って体験版をプレイしたのですが、一発でその空気感に引き込まれて即製品版を購入してしまいました。非常に当たりのゲームでしたね。ファントムブレイブといい、ルフ魔女といい、日本一は既存のゲームをアレンジしてうまく独自性のあるシステムを作るのがうまいです。
- プレイ前はキャラ萌えにはあまり期待していなかったのですが、キャスたんにははまってしまいました。動画配信者の悲哀みたいなのも描かれていて、現実のYouTuberとかVtuberとかもきっといろいろあるんでしょうね。戦闘面ではちょっと弱めなのですが、愛を注いで装備を強化し、ラスダンでも活躍してくれました。結局装備とステラでなんとかなります。
- 取り上げませんでしたがBGMも秀逸でした。音楽,お酒、会話の楽しいマスターなど、バーのしっとりとした雰囲気が存分に味わえる良ゲーだったと思います
- SRPGといってもSRPG的な要素はあまり強くなく、普通のローグライクRPGとして楽しめると思いますので、面白そうだと思った方は是非体験版をプレイしてみてください。
- 近々、クリア後ダンジョン攻略のコツを取り上げるつもりです。
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