Crest Of
The Stars
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■ 星界の断章II追加分

 □ あ行
アーヴ abh
.皇族、貴族、士族の総称。
全部で2500万人ほど。そのうち大部分は士族で、貴族は20万人ほど。
子弟に対する遺伝子改造の義務を負う。
【名前】
 アーヴの名前は以下の要素・順番で構成される。
 ・氏姓フィーズ
 ・姓称号サペーヌ
 ・初代当主の名(生格)。姓称号と合わせて家姓と呼ぶ。
 ・称号(貴族、皇族のみ)
 ・個人名
 地上人からアーヴになった場合、改名する必要がある。
.ホモ・サピエンスから遺伝子改造によって生み出された変異人類。語源は「あま」であり、宇宙あるいは海の種族を意味する。
1.と区別するため「遺伝的な」「生まれながらの」アーヴ、とも呼ばれる。
地上人に対し自らについて語ることが少ないため、多くの誤解も生まれている。
【身体】
 青系統の髪(緑から紫まで幅広い)。
 美形(アーヴにしては平凡、と言えば地上人でも1000人集めれば対抗できるくらい、という意味)で性別の区別がつきにくいことも多い。
 15歳くらいまでは人間と同じように加齢(成長)、それから25年ほどをかけて10歳分ほど外見が年をとる(成熟)。その後は死ぬまで老けない。
 しかし、脳細胞は再生しないため不死ではない。年をとるにしたがって眠る時間が長くなり、知性が破壊される前に脳の呼吸領野が機能停止することで死亡する。寿命は200〜250年。
 骨格と循環器系の特性によりかなりの高加速(20標準重力以上)にも耐えられる。
 感覚器官が遺伝子操作によって鋭敏に調整されているため、絶対音感を持つなど、感覚的に地上人より優れている部分もある。また、地上人にはない空識覚という感覚も持つ。
 27000箇所の塩基配列が指定されており、それにより先天性疾患の防止と、種としての同一性の保持を行っている。そのため、誕生から2000年近く経つ今でも基本的な遺伝子組成は変わっていない。
【出生】
 自然受胎出産は危険が伴う(2%程度の確率で重大な先天性疾患が発生する)ため、人工子宮で受胎・育成されるのが普通。したがって一卵性双生児は極めて珍しい。また、遺伝的な地上人との間で子供が生まれる可能性はほとんどなく、生まれたとしても先天的な欠陥を負っている。
 血縁ではなく家風を重視するため、遺伝子提供者の性別などにはこだわらないが(ただし人間以外の生物を用いるのは禁止)、普通は自分と愛する者の遺伝子を掛け合わせる。
 子供に遺伝要素を教えられるのは親だけ。遺伝記録は公開されているが、未成年者の閲覧には親の許可を要するし、遺伝子提供者に確認することは失礼だとされている。
【性格】
 「アーヴ、その性、傲慢にして無謀」。
 自分の誇りを大事にする。
 人質を取られたとしても相手の要求を飲むことは決してない。
 誰が建造したものであれ空間にあるものは自分たちのものだという感覚があるが、地上世界の資源は地上の民のものだという認識があり、むやみに奪うことを嫌う。
 星界軍の艦艇に仲間と共に葬られることは最高の栄誉であると考えている者が多い。
 真摯に戦うことが、殺す相手への礼儀と考えている。
 戦時には乗員を艦の部品とみなす傾向がある。
 無重力空間で泳ぐこと、宇宙船を操縦することは一般的な楽しみ。自由に船を駆ることができるなら、その何倍もの間狭い座席に拘束されることも厭わないほど。饗宴も好まれ、各地で定期的に催されている。
 空識覚こそがアーヴをアーヴたらしめていると自負している。
【家族】
 恋は激しく短いものが多いので結婚という制度はない。
 したがって、親は一人しかおらず、親子の性別により父の娘フリューム・ローラン母の息子フルーク・サーランなどと呼ばれる。
 子供の間は遺伝子交換や子供を作ることは許されていない。20歳になるか翔士に叙任されれば成人と認められる。その際にアーヴの原罪について親が話すのがいわば成人儀式。また、翔士、交易者、親としての生き方を経験することで一人前だといわれる。
 他家の内部事情には関わらないのが常識。
【文化】
 たいていは成長期のうちに修技館に入り、平面宇宙航法を習得する。
 自然な1日がない空間が生活の場であるため、時間帯によって挨拶を使い分ける習慣がない。ただし、宴が開かれる時間帯は夜として扱うのが伝統。
 宗教は持たず、霊の存在も解決済みの問題として否定しているが、何か不可知なものへの恐怖は心の奥底に残っている。また冗談の種にするくらいには心霊という概念に親しんでいる。宗教的なものを感じさせる行事も多い。
 弔いの晩餐など、独自の習慣も多い。
 武器携行の習慣はない。
 性差というものにあまり意味を感じず、社会での役割分担も明確に意識されてはいない。ただし、体力面では男性がやや有利。
【教育】
 幼い頃の初等教育はもっぱら親が行い、家風の継承に勤めると共に、読み書き等を教える。軍士は休暇を取り、領地のある親は代官を雇うのが普通。
【衣服】
 性差がない。つなぎを着るのが普通で、他に貴族の正装としての長衣などがある。基本的に首の上と手首の先以外は露出しない。
【住居】
 たいてい人工環境の中にあり、屋外も屋内も区別がない。雨も好きな時間、好きな場所に降らせることが出来る。そのため、防寒・防暑という概念になじみがない。
【食生活】
 薄味を好む。塩や香辛料は控えめで、素材の味を楽しむことを重視。油の強いものは湯通ししたり、煮こぼしたりして食することも多い。料理の見た目はもちろん、それをのせる食器、箸や盆などにも最大限の注意を払うのが特徴。
 素材は肉(鶏肉、子羊肉など)、野菜(南瓜、玉蜀黍とうもろこし、人参など)、魚介類(貝、海亀、鱒、すずき、海老など)、米、小麦、果物(桃、柑橘類、梨など)、香辛料(大蒜にんにくなど)・調味料(醤油など)など。
 料理法は羹、碗物、吸い物、澄し汁ルベス、麭包み、香辛料煮込み、香味焼き、炙り肉アピュリル、刺身、生(野菜など)など。
 飲み物は珈琲、桃果汁、柑橘果汁、葡萄果汁、紅茶、緑茶、林檎酒、麦酒、発泡米酒、混合酒、蜜酒、林檎火酒、白酒など。血液中の酒精分が片っ端から分解されていくので、酒を飲んでもほろ酔いにとどまり、泥酔することはない。
【歴史】
 元々は軌道都市で都市予算の半分をつぎ込んで生み出された人工生命体。人の遺伝子改造によって作り出され、人と区別するために青い髪を与えられた。また、独自の思考は持たされているものの、宿命遺伝子により自由や独立といった概念は有さないように造られていた。
 最初に作られた原アーヴは30体、うち1体は訓練過程で失われたが、残りの29体は植民地開発のため、可住化の可能性が高い外宇宙の星系に派遣された。
 探査船は出発してから艦内時間で約9年後、ユアノンを発見、約5ヶ月後に捕獲に成功し、母船をユアノン推進に改造。無限の軌道を得た彼らは母都市との訣別を決意し、深宇宙で独立を宣言。その後船を近くの恒星系(おそらく本来の目的地)につけ、母船であった探査船をより大きな都市船アブリアルに改造した。
 改装による居住区の拡張に伴い、急激な人口爆発が発生。一人の親から子供が生まれるという特異な家族形態から、人口が増えても各成員は極めて強固な先祖意識を捨てなかった。このような意識を共有する、同じ黎明の乗り手を先祖にいただくグループは氏族と呼ばれるようになった。
 都市船時代、職業訓練は徒弟制度によって行われた。多くの乗り手は自分の子供を徒弟にすることを望んだため、都市船内の部門は氏族と同義になった。また、自分の子供たちのうちもっとも優秀な者を選んで後任とするのが一般的だったため、各部門の長は実質的に世襲となり、黎明の乗り手の直系と認識されるようになった。
 各部門は基本的に平等だったが、船の航法をつかさどる航法氏族だけは別格で、その長は船王と呼ばれていた。彼らは帝国創建後、皇族を形成するようになる。
 やがて巨大な都市船を運用するようになったアーヴだが、母都市の派遣した懲罰隊を恐れて自衛するようになり、ついには自分たちの故郷である母都市を殲滅してしまう。しかし、空間に散逸する母都市の残骸を目にした彼らは、自分たちが故郷を愛していたことに気付き、母都市の文化の守護者として生きることを種族としての目的にする。また、母都市を滅ぼしたという罪を忘れないために、青い髪を遺伝子に刻み付けるようになる。同時に、自らをアーヴと名乗るようになり、以降宇宙をさすらう武装商人となる。当時、軍隊は氏族単位で編成されていた。
 大放浪時代のアーヴが主に扱ったものは人類社会の情報である。その時代、彼らは半径一光世紀に広がった人類社会をつなぐか細い、唯一の糸であった。同時に、都市船内部でもアーヴどうし、氏族単位の財産を交換することによる交易が行われていた。生活空間は都市船内部に限られていたが、定期的に加減速を停止し、訓練のため交通艇を操舵していた。
 やがて交易により人類社会の科学の精髄を蒐集したアーヴは平面宇宙航行理論を確立。それによって可能になりうる恒星間戦争を防ぐために、その理論を武力で独占することを決定、帝国を創建した。
 詳しい歴史は→アーヴによる人類帝国フリューバル・グレール・ゴル・バーリ
アーヴ言語文化学院
デルクトゥーにあるジントが通っていた学校。国民志願者を教育する施設で、教師はそのほとんどがデルクトゥー人で、元国民が多い。創立者も現学院長(952年当時)も元国民のヴォーラーシュ伯国の領民。
帝国とは無関係で、ヴォーラーシュ領民政府教育省管轄の私立学校。主にアーヴ語を教え込まれ、文化については礼儀作法を少しやる程度。
生徒は大体デルクトゥー人。国民として業績をあげて、貴族といわないまでも士族に叙され、子孫をアーヴにしようと考えているのが大部分。
アーヴ語
帝国の公用語。ヤマト語族・トヨアシハラ語派に属する。地上世界で使われることもある(多数の邦国から移民を受け入れた、新しい地上世界に多い)。軌道都市で用いられていた古アーヴ語を起源としている。現在の正統アーヴ語はラクファカールで話されているもので、特に皇族が用いるものは古い音を守っている。
多くの地上世界出身者を家臣や従士として迎え入れてきた伝統があるので、語学教育法は洗練の極みに達しており、一月もみっちり練習すれば十分会話できるようになる。
アースと呼ばれる独自の文字を使って記すが、アルファベットでの標準的な表記も確立している。
【歴史】
 元は軌道都市で用いられていた言語。軌道都市の住人が地球で生活している時代に使用していた言語から、外来語を全て廃することで作り上げたもの。原アーヴにも伝えられたが、文字は与えられなかった。
 しかし、元々音節数が多い言語であり、さらに原アーヴたちには文字がなく、しかも小人数で閉塞的な生活を営んでいたこともあり、音韻法則をも破壊するほどの急激な(恐らく2〜3世代のうちに)短縮化現象が起こった。まず、母音の脱落が起こり、次に同音異義語の発生を避けるため残った母音が脱落したものに引きずられるという現象が発生、母音の種類が増えた。子音についても発音部位の遷移、鼻音の非鼻音化などの現象が生起し、その過程で語幹の末尾音と格助詞の融合が起こったと考えられている。(都市船時代に行われた公的記録の破棄(更正にはアブリアルの事故と伝わっている)により制定者やその過程についてはよく分かっていない)
 自立後にはアースと呼ばれる独自の文字が制定された。
 帝国創建後は標準アーヴ語が確定。離れて暮らす同胞たちとのコミュニケーションを円滑にするため、正しいアーヴ語を保存しようという意識的な努力が払われるようになったため、大きな変化は生じなくなり、現在に至っている。
暑いオーラ
アーヴの間では数千度から数万度に達する恒星表面を形容する言葉。
アトスリュア
.初代フェブダーシュ男爵。地上出身の女性。スルーフの母親。技術者としては並だったが、指導者の資質があり、最終的には技術元帥にまでのぼりつめた才女。
【経歴】
 ・時期不明 惑星ディ・ラプランスで誕生
 ・時期不明 星界軍に志願し、掌兵科従士に
 ・時期不明 結婚(修技館卒業前に離婚)
 ・時期不明 スルーフ誕生
 ・時期不明 造兵修技館入学
 ・時期不明 造兵修技館卒業。造兵列翼翔士に叙任
 ・帝国暦906年頃(男爵領暦1年) 技術元帥に昇進。艦政本部長官に就任。フェブダーシュ男爵に叙爵
 ・帝国暦921年より前 死亡
.→アトスリュア・スューヌ=アトス・フェブダーシュ男爵・ロイ
アトスリュア・スューヌ=アトス・フェブダーシュ男爵公女ヤルリューム・リュム・フェブダク・ロイ
→アトスリュア・スューヌ=アトス・フェブダーシュ男爵・ロイ
アトスリュア・スューヌ=アトス・フェブダーシュ男爵リューフ・フェブダク・クロワール
 Atausryac ssynec atausr lymh faibdacr Clüarh
第三代フェブダーシュ男爵。地上人の父親を持つ生まれながらのアーヴ男性。ラクファカールに妹のロイがいる。遺伝子提供者はアーヴ女性(コセール?)。昔猫を飼っていた。
自分の所領を守るという口実のもと、ジントを拘禁しラフィールを足止めしようとするが、その真意はラフィールを四ヵ国連合との取引に使うことにあった。そのことでラフィールと対立し、戦闘により死亡する。
死亡時の階級は予備役十翔長。
【容姿】
 金属光沢の仄かな青色の髪。切れ長の目。冷笑的な口元。頭が肩幅に比べてやや大きすぎる(ラフィール評)。
【性格】
 劣等感の塊で、父親が地上人であることに耐えられず拘禁、他のアーヴと接触しないよう所領に閉じこもり、自分を憧憬し崇拝する地上人の女性で家臣を固めている。他人に価値観を押し付けがちな人物。
 アーヴであることに重圧を感じているらしい。
 緊張すると食欲がなくなる。
【嗜好】
 好きなものはセムリューシュ産の林檎酒、海亀の羹。ペットなら犬。子供の頃は梨の糖蜜煮。
 嫌いなものは地上人の男。
【経歴】
 ・帝国暦906年より前 誕生
 ・時期不明 スルーフ・ロイと帝都へ移住
 ・時期不明 初代男爵死亡。フェブダーシュ男爵領へ移住
 ・帝国暦921年より前 スルーフ・ロイと帝都へ移住
 ・帝国暦932年頃 スルーフを監禁し、第三代フェブダーシュ男爵に叙爵
 ・帝国暦952年 死亡
アトスリュア・スューヌ=アトス・フェブダーシュ男爵リューフ・フェブダク・ロイ
 Atosryac ssynéc atosr lymh faibdacr Lauïc
第四代フェブダーシュ男爵。スルーフの娘でクロワールの妹。遺伝子提供者はコセール。
ラフィールやユースの上官。
【容姿】
 後ろで束ねた青みがかった銀色の髪。豹のような黄玉色の瞳。光沢のある眉。朱色の唇。
【性格】
 自らを道楽者と自認し、饗宴、遊戯、美食を好む。
 父親譲りの饒舌。むしゃくしゃしたときは革製の砂袋を殴るのが癖。
【嗜好】
 林檎酒が好き。
【経歴】
 ・帝国暦906年頃 ラクファカールで誕生
 ・時期不明(上記の後すぐ) フェブダーシュ男爵領へ移住
 ・時期不明 スルーフ・クロワールと帝都へ移住
 ・時期不明 初代男爵死亡。フェブダーシュ男爵領へ移住
 ・帝国暦921年より前 スルーフ・クロワールと帝都へ移住
 ・帝国暦955年頃 フェブダーシュ男爵に叙爵
 ・帝国暦955年 ヴォベイルネー鎮守府所属突撃分艦隊ラトゥーシュ第1058突撃戦隊第一突撃隊司令に着任。階級は百翔長
 ・帝国暦958年 千翔長に昇格。第一蹂躙戦隊司令官に着任
アトスリュア・スューヌ=アトス・前フェブダーシュ男爵リューフ・レカ・フェブダク・スルーフ
 Atausryac ssynec atausr lymh raica faibdacr Srumh
第二代フェブダーシュ男爵。クロワールとロイの父親。地上人出身のアーヴ男性で推定70歳以上。フェブダーシュ男爵館の設計者でもある。
自分と同室に監禁されたジントの脱出に協力する。息子の死後は帝都城館へ移住した。
【容姿】
 晒したような白髪。白い眉。がっちりした体躯で矍鑠(かくしゃく)としている。
【経歴】
 ・時期不明 地上人の両親の間に誕生
 ・時期不明 造船修技館入学
 ・時期不明 造船修技館卒業。造船列翼翔士に叙任
 ・帝国暦906年頃(男爵領暦1年) 母の叙爵によりフェブダーシュ男爵公子に
 ・時期不明 フェブダーシュ男爵領へ移住
 ・時期不明 息子と娘を連れて帝都に移住
 ・帝国暦921年より前 母親が死亡。フェブダーシュ男爵に叙爵。代官に所領を任せ、クロワール・ロイと共に帝都へ移住
 ・帝国暦932年頃 息子に監禁され、隠居したことにされる
 ・帝国暦952年 息子の死後、帝都城館へ
アブリアル Ablïarsec
.根源29氏族の一つ。主航法子の末裔。その名は巨大都市船アブリアルに基づく。語源は「天照アマテラス
【都市船時代】
 航法をつかさどる氏族。氏族長は船王として、アーヴを統べ、進路等の重要事項を決裁し、裁判を主催し、新しい仕事があれば担当する氏族を決めた。また、戦時には最高指揮官として采配を振るった。帝国創建以降は皇帝氏族となった。
【特徴】
 都市船時代は船王の一族は大抵この名を名乗っていたが、帝国創建後は宗家以外の者はアブリアルの姓を名乗ることが許されなくなった。
 帝国暦初期の頃には男系はキー、女系にはリューシュの姓が与えられていたこともあったが、いらぬ混乱の元としてそれぞれの家の初代が決めることになった。
 この一族に属する貴族は多く、諸侯だけでも100家を越える。
 短気で怒りっぽく、『逆鱗で魂をよろう』といわれる。反面怒りに任せてヒステリックに喚き散らしたり、暴力を振るうことは決してあってはならないと幼い頃からしつけられている。また皇帝になるかもしれないため、臣下に依怙贔屓する人物だという印象を与えないよう、誰かのために泣いたり、虚言したりすることは厳に戒められている。
 スポール一族とは伝統的に仲が悪い。帝国創立期前後にスポール一族が近くにいたことと関係があるのか、身近に苦手な人物がいないと落ち着けないという奇妙な性質も有する。
 軍士としてはきわめて優秀。率先して戦地に赴くのが伝統。
【宗家】
 八王家。
【家紋】
 八頸竜ガフトノーシュ。家により紋章旗の地色が異なる。
【家徴】
 アブリアルの耳ヌイ・アブリアルサルと呼ばれる上部が尖った耳。
.ユアノン推進の巨大都市船。幾度かの改装を経て、今は帝宮として使用されている。最高時で100万、現在でも20万人以上が生活している。人類の作り出した最大の建造物の一つ。ユアノンは8つの門となっていて、7つは中心領域、1つは第十二環に通じている。
 元々は母都市から送り出された探査船で、ユアノン推進に改装された際にこの名で呼ばれるようになった。探査船部分はそのままに残されており、その操舵室は聖墓、人工子宮保管室は始祖の間と呼ばれている。
.アブリアル伯国の中心からラクファカールを照らす恒星。帝国の乳房と呼ばれる人類宇宙最大の反物質燃料製造工場がある。
アブリアル・ドゥロイ
都市船アブリアルの船王(前127年頃より前〜前120頃)。
アーヴが氏族ごとに分裂してしまうのを防ぐため、戦闘訓練組織を統合して連合学校を設立した。
前120年頃、公的記録の一部破棄と、歴史的記録に関する船王の検閲義務付けを決定。反対したカリュー氏と戦闘になってしまったことを反省し、譲位することを決定した。
アブリアル・ネイ=ラムサール・バルケー王ラルス・バルケール・ドゥサーニュ
 Ablïarsec néïc lamsar larth barcoer Dusanh
帝国皇太子にして帝国艦隊司令長官(945年より前以降)。ドゥサーニュより3か月年下。ラフィールより年上(もしくは同じ年)の息子がいる。
エクレーム子爵の爵位を有するが、所領は一度訪問したのみで放置している。
【容姿】
 腰の辺りまで垂れた濃紺の髪。尖った耳。新雪のように白い顔。
【性格】
 ケネーシュ曰く『度しがたい性格』。
【経歴】
 ・帝国暦945年 流砂艦隊司令長官に着任
 ・帝国暦955年 幻炎艦隊司令長官兼幻炎第三艦隊司令長官に着任
 ・帝国暦956年 狩人艦隊司令長官に着任
 ・帝国暦959年 双棘艦隊司令長官に着任
アブリアル・ムイセーヌ
前120年頃のアーヴ。アブリアルとしては傍流。航法部士官になるべく訓練を受けている。
カリュー・エレークとは連合学校時代の同級生。三期生。
アルハミド星間帝国
20あまりの有人星系を有し、スュルグゼーデ王国と接する星間国家。ジムリュアの乱の頃、帝国が無人星系に反物質燃料工場を設置したことが原因となって開戦。帝国に破れ、吸収された。
主情報集積室アルム・ザベール・リラグ
カリュー氏居住区の中心に位置する情報集積室。
先任編纂士アルム・ミマビア
記録部第2の地位にある編纂士。
エクリュア・ウェフ=トリュズ・ノール
Aicryac ïémh tlyzr Naurh
アーヴ女性。有能な砲術士。バースロイルで砲術士として活躍したあと、ソバーシュの指名でフリーコヴに乗りこみ、航法士となった。初めて会った同世代の地上人であるジントに興味を持っている。5歳までは父と、頭と背中が鯖虎模様でそれ以外は白い一匹のオス猫とで深宇宙をさすらっていた。
【容姿】
 柔らかそうな空色の髪。空色の眉。空色の瞳。
【性格】
 立ち居振舞いは物静か。基本的には無口、無表情。だが、実は口が悪く、音痴でスピード狂。音痴なのは父親譲りで、本人もそのことには気付いている。
 自分では正直で、良識にあふれた人間だと思っている。
【嗜好】
 好きなものは林檎の香りをつけた紅茶。時空分離時に現れる虹を眺めること。船を駆ること。湧き出してくる想念を弄ぶこと。
 年老いるから猫が嫌い。子供の頃は人参が大嫌いだった。
【経歴】
 ・帝国暦933年(0歳) バルケー王国の平面宇宙航行中の交易船で誕生
 ・帝国暦938年(5歳) エクリュア館に猫と共に送られる
 ・帝国暦948年頃 曾々々祖父が永眠
 ・帝国暦952年(19歳) 修技館入学
 ・帝国暦955年(22歳) 修技館卒業
 ・帝国暦955年(22歳) 列翼翔士に叙任。バースロイル次席翔士に着任
 ・帝国歴956年頃 後衛翔士に昇進
 ・帝国暦958年頃 前衛翔士に昇進
 ・帝国暦958年(25歳) フリーコヴ航法士に着任
 ・帝国暦959年(26歳) 十翔長に昇進。フリーコヴ副長兼航法士に就任
エミンド
コーザイ出身のエレンディア人男性。ジムリュアの何十番めかの恋人。エレンディア宇宙軍最高提督(ジムリュアがコーザイ総督に就任した当時)。ジムリュアより50歳ほど年下。
ジムリュアの乱に加担した。

 □ か行
エクリュア館ガサス・エクリュアル
エクリュア一族が暮らす、ラクファカールにある軌道館。古い突撃艦を元に増設したもの。兵装の代わりに居住区が置かれている。主機関が搭載されていた館の中央部は無重力空間になっており、子供用の育児室(お昼寝部屋)と大人用の無重力庭園がある。交通艇も大型艇が1隻、その他数隻が置かれているが、収容する余地がないため外に係留されている。
エクリュアの大人達は仕事で帝都を離れていることが多いので、子供達のための共同の保育所、学校という意味が強い。
カシュナンシュ・ウェフ=ゴス・エール
軍令本部情報局長官(952年当時)。階級は提督。トライフ(レムセール)との間に、翔士修技館の一室と空色髪の少女にまつわる挿話から始まった確執があり、一時はお互い殺意を抱くほどに憎んでいた。
家宰ガボティア/執事長ガボティア/家宰ガポティア gabotiac
.貴族城館の家政と事業を取りしきる、家臣たちの長。
.ペネージュが16歳だった頃のレトパーニュ大公爵家家宰。地上世界出身者。40年以上大公爵家に仕えている。骨の髄まで無心論者。性格は陰険(ペネージュ評)。
.クロワールの死後に就任したフェブダーシュ男爵家執事長。生粋のアーヴ。男爵家で唯一交通艇を操舵できる。
カリュー Calyc
根源29氏族の一つ。語源は「はつい
【都市船時代】
 航行日誌を中心とした公的記録を採取整理し、保管していた氏族。ただし、実際にその業務を行っているのはごく一部の記録部員だけであり、大多数は記録部とは無関係の仕事を行っている。倫理意識も高く、不必要に記録を探るようなこともしない。また、自分達の公的記録や他星系の歴史記録等を主たる交易の商品としていた。帝国時代初期には高級官僚を輩出した。都市船アブリアルの事故(実際は船王の命による公的記録の一部破棄)により航行日誌を喪失してしまったことを未だに恥じている。
【特徴】
 人の上に立つのは得意ではないが、事務や調整を任せればこれほど心強い存在もない、といわれる。
【宗家】
 キザセーフ大公爵家。
【家紋】
 羽を広げた鷲。
【家徴】
 共通するものはないが、一般に痩せ形で長身。
カリュー・エレーク
前120年頃のアーヴ男性。記録部士官として教育されている最中。一族の嫡流で、しかも優秀なため、将来は編纂士となり、記録長になることが期待されている。
アブリアル・ムイセーヌとは連合学校時代の同級生。三期生。
カリュー・サティーシュ
前120年頃のカリュー氏族長兼記録長。
カリュー・ベポール
前120年頃の先任編纂士。
カプラン星系
黄色矮星と11個の惑星からなる有人星系。第3惑星ケディは有人惑星。
ミーニクール星系
アーヴが前120年頃交易を行った有人星系。科学時代は植民期に比べても劣るほどのものしかなかったが、アーヴのと交易を経て2世紀分は進歩した。
記録部
都市船時代、航行日誌を中心とした公的記録を採取整理し、保管していた部署。カリューが担当している。最高責任者は記録長。
クレンメン山
ダクフォー(ミッドグラット)にある山。サムソンの生家の近くにある。
建国宣言
アブリアル・ドゥネーが帝国暦元年に行った、アーヴによる人類帝国の建国を証する宣言。
ケディ
惑星メルハバに対する住民の呼び名。
→メルハバ
連合学校ケンルーラシュ・ロルダラ
家族が施す初級教育と、氏族が施す専門教育の間の期間、10代半ばから20歳くらいまでのアーヴを集合させて教育する期間。主に軍事訓練が施される。恐らく3年制。設立者はアブリアル・ドゥロイ。
都市船アブリアルの右舷やや船首よりの一郭に設置されている。
翔士修技館ケンルー・ロダイル/ケンルー
飛翔科の修技館。生まれながらのアーヴにのみ入学資格がある。十万以上の人口を収容する人工惑星で、いくつもの庭園がある。二部制で運用されている。
帝国で平面宇宙航法を学べるのはここしかないため、星界軍への入隊希望者だけでなく、交易者などが平面宇宙航行資格を取得するために入学することも多い。
戦闘術の修得よりも、平面宇宙航法の習得に時間が割かれており、教育課程の総仕上げとして平面宇宙航行実習を行う。
コリュア・ウェフ=コル・サグゼール
アーヴ男性。ノールに好意を持っている。ノールより年上。
【容姿】
 コリュア色の髪と瞳。
【経歴】
 ・時期不明 戦列艦に配属
 ・帝国暦955年 巡察艦に配属。階級は後衛翔士

 □ さ行
主計科従士サーシュ・サゾイル
艦で経理や衛生を担当する従士。
軍匠従士サーシュ・スケム
艦の整備や応急措置を担当する従士。
記録部員サクンソスィア
都市船時代に記録部で歴史編纂を行っていたアーヴのこと。カリュー氏の中から選ばれる。
大多数の人はこの職に短い間だけ就くが、少数の優秀な者は一生をこの職にあてる。
情報集積室ザベール・リラグ
都市船時代、都市船の航行日誌などの情報を管理していた部署。カリュー氏居住区の中心部に位置する主情報集積室の他に、予備として居住区外に位置する4つの副情報集積室がある。
サムソン・ボルジュ=ティルサル・ティルース
 Samsonn borgh tiruser Tirusec
地上世界出身の男性。40歳近い。従士からの叩き上げの翔士。地上では目に出来ない光景を見るために星界軍に入隊した。退役して、年金で買った農場をクレンメン山の麓で営むのが夢だが、給料と年金分の働きをするため星界軍に残っていた。
958年頃退役し、農場経営の参考にするために、ハイド伯爵家の家臣になった。
【性格】
 それなりに義理堅い(自称)。
【嗜好】
 好きなものは酒。特に玉蜀黍から作った強い蒸留酒。エデロイ茶もお気に入り。
【経歴】
 ・帝国暦945年より前 星界軍に入隊
 ・帝国暦952年 イリーシュ門沖会戦に参加。初の実戦
 ・帝国暦952年 スカレーシュ門沖会戦に参加
 ・時期不明 軍匠列翼翔士に叙任。アーヴになる
 ・帝国暦955年 バースロイル監督に着任
 ・帝国暦958年頃 星界軍退役。最終階級は軍匠列翼翔士
 ・帝国暦958年頃 ハイド伯爵家家宰に着任
船を買うサ・メーヌ
貴族が使う場合の意味は、目的地まで平面宇宙航行船を帝国船から借り、目的地に到着後、船から時空泡発生期間を分離して帝国に返還した上で船体を買い取る、という一連の行為のこと。
お昼寝部屋シル・キュルデール
エクリュア館にある育児園のこと。成熟期前の子供たちが遊んだり昼寝をしたりするためこう呼ばれている。
人工翼
ベルポウコスで選手が着用する器具。規格はルールで定められている。両肩胛骨の間を狭めることで羽ばたき、飛行することができる。ただし、背面状態では飛行できない。
氏族長スィーフ
都市船時代の各氏族の長。
スカール
.帝国基準通貨の単位。1スカール=10000シェスカール。20〜30スカールもあれば独身男性が一ヶ月生活できる。
.都市船時代に流通していた通貨。主に船内の交易で用いられていた。
スポール・アロン=セクパト・レトパーニュ大公爵ニーフ・レトパン・キネージュ
アーヴ女性。ジムリュアの乱があったころのレトパーニュ大公爵。
【性格】
 ジムリュア曰く、『より高位の相手こそ侮辱しがいがある、と考えているかのよう』な人物。
【経歴】
 ・時期不明 第一機動軍団附属輸送戦隊司令官に着任。階級は千翔長。宮中序列は大公爵公女
 ・時期不明 退役。予備役編入
 ・時期不明 大公爵に叙爵
 ・時期不明 対人類連邦戦
カリュー氏族学校校長セーフ・バンベール・カリュール
カリュー氏族学校の最高責任者。名誉職的性格が強い職で、実務はほぼ全て教頭に任せている。年に1度、卒業直前の学生に記録部員としての心構えを説く講義を担当している。
育児園ソムローニュ sodmronh
球形の人口惑星。中は無重力でふかふかの内張りがしてあり、発泡剤の星が浮かんでいる。育児園は子供用の施設。アーヴの子供は、生まれてしばらくすると頭環をつけてそこに放り込まれ、作用反作用の法則を体得したり、頭環の使い方を覚えるなどして、航法野を形成する。
無重力庭園ソムローニュ・ノソト
無重力状態に調整された空間。主に大人用のものを指す。大人にとっても楽しめる施設。
育児室ソムローニュ・ロザソト
幼児のための無重力生活空間。設置目的は恐らく育児園と同様。

 □ た行
第三副情報集積室ロイ・ザベール・リラグ
予備の情報集積室のひとつ。左舷船首よりトリーシュ、イーデフ両氏族の居住区の境界に位置している。
春の苑デウ・コル
四季の苑の一つ。桜が植えられており、1ヶ月周期で満開になるように調整されている。
デルクトゥー
ヴォーラーシュ伯国の有人惑星。水気に乏しい、赤茶けた惑星。淡水を湛えた渓谷や湖沼が散見されるだけで、いわゆる海はない。しかし、住民は渓谷を「海」と呼んで愛着を寄せている。
アーヴが開発した(つまり、無人惑星を改造して入植させた)惑星。自転速度が速く、そのせいで砂嵐も多い。また静止軌道も低く、宇宙港は20.6セダージュ(=20600km)、城館は27.7セダージュ(=27700km)という低めの軌道を回っている。動物園がある。
【言語】
 デルクトゥー語。大多数の人間はアーヴ語を解さない。
【文化】
 初期の住民が全てエルカーシュ侯国のロワムガムという地上世界からの移民。領民のほとんどはエルカーシュに遠い親戚を持ち、ロワムガム的倫理観(引越しは一生に一回あるかないかなど)に今も縛られている。
 住民は総じて人なつこく、移民の子孫でありながら愛郷心も強い。長幼の序を重んじる社会。他人に対する関心が高く、何か変わったところがあればすぐに原因を探りたがる。
 人を迎えるときでも寝椅子や長椅子に横たわる。灌水浴を偏愛している。
 大家族で生活するのが普通。子供を育てるのは老後の保障のためだと考える人が多い。老人福祉制度もそれなりに発達しているが、その世話になるのは恥だと考えられている。特に、子供がいるにもかかわらず公共施設に入れられることはこの上ない恥辱。
 民間人の武装は禁止。
 比較的厳しい性表現規制法があり、性を扱う創作物を取り締まっている。
【衣服】
 色や柄は多様で、男女で厳密な区別がある。女性の服は上下に分かれていて、膝から下は剥き出し。
【食生活】
 乳製品(牛酪など)と香辛料(ビリス葱など)を多用する。特に牛酪。酔い覚まし禁止。
【住居】
 集合住宅を嫌うため、背の低い建物が延々と広がっている。
トライフ・ボルジュ=ユブデール・レムセール Tlaïmh baurgh ybdér Laimsairh
アーヴ男性。修技生時代は戦列艦で過ごした。
【容姿】
 濃緑色の髪。浅黒く中高で猛禽類を思わせるような精悍な顔。発達した犬歯(トライフ家の家徴)。
【性格】
 たまに冗談を口にしても、なぜかそうと受け取られず、本気だと思われてしまう。
【思考】
 カシュナンシュのことは一時は殺意を抱くほどに憎んでいる。食べ物では大蒜が苦手。
【経歴】
 ・時期不明 ラルブリューヴ鎮守府副長官に就任
 ・帝国暦952年 トライフ艦隊司令長官に着任。階級は提督
 ・時期不明 大提督に昇格
 ・帝国暦956年 狩人第二一艦隊司令長官に着任

 □ な行
 □ は行
パーヴェリュア
初代バースロイルの軍匠従士長。専門は反応炉。
本名はアントン・パーヴロヴィチ・フセイノフ。星界軍入隊時に改名が必要だと誤解し、それ以来アーヴ風の名を名乗っている。
サムソンに呼ばれてバースロイルの乗員となった。
アプティック防衛戦で負傷したが、独力で救命莢にて脱出。
その後退役し、ハイド伯爵家の家臣になった。
アーヴ士族バール・リューク
同:士族
氏族学校バンビア
都市船時代、氏族ごとに設けられていたと思われる専門教育機関。
カリュー氏族学校バンビア・カリュール
カリュー氏の氏族学校。2年制。
ビルシュ級巡察艦レスィー/ビルジュ級巡察艦レスィー
星界軍の巡察艦の一つ。958年には旧式艦になっていたが、現役。
平面宇宙航法ファーゾス
平面宇宙を航行するための技術。帝国では翔士修技館でしか習得できない。
理論を理解するための数学や物理学、平面宇宙航行を可能にする機器にまつわる工学的な知識など、修得にも多大な時間がかかる。
拘束絨毯ファセージュ
床に敷くことで、無重力空間でも床から離れてしまわないよう、歩行者を床面に拘束することが出来る絨毯。歩行の支障にならないよう、拘束力はさほどでもない。
成熟フェーロス/成熟期フェーロス/成熟期フェーロソス féroth
アーヴの成長過程における第二段階。15歳〜40歳くらいまで。外見は10歳ほどしか年をとらず、以降外見は固定する。
フェグダクペ・グレーダ
フェブダーシュ男爵家の家政室主任家士。ミルケーズ出身の地上人女性で本名はハンナ・デリーズ。
息子のヴィンを保育筐で育てるか否かで夫と離婚、親権を取ることができなかったため、故郷を離れることにしてフェブダーシュ男爵家の家臣となった。
男爵家では、自分から意思や感情を表すことのない、小心な人物と馬鹿にされていたが、男爵領での紛争の中で人に命令する快感に目覚めたらしい。故郷に戻っても、家族も友人もいないという理由で男爵館にとどまっている。クロワールの死後は帝都へ行き、セールナイ商会で働いている。
グレーダという名前はヴィンに読み聞かせていた絵本の主人公からとられている。
アーヴによる人類帝国フリューバル・グレール・ゴル・バーリ Frybarec Gloer Gor Bari
1500以上の有人星系(半数以上はアーヴが開発した星系)と20000以上の半有人星系を支配する汎星系国家。略してアーヴ帝国バール・フリューバル帝国フリューバルとも呼ばれる。帝都はアブリアル伯国のラクファカール。元首は皇帝。国章は八頸竜。国歌は「我ら、ともに永遠を抱かん」。
妙な露悪趣味があり、地上の民には無慈悲と見られたがっているようだが、内乱には遠慮なく介入する。空間、恒星、無人惑星はおしなべてアーヴのものという方針を採っている。
【人口】
 アーヴ2500万人、国民約10億人、領民9000億人。
 帝国創建時はアーヴ27万2904人。(当時の人類の人口は1000億以上)
【組織】
 皇帝を頂点とする帝政+貴族制。理念なく存立し、多様な人類社会をアーヴによって統合することにのみ専念する。そのため地上のことには干渉しないのが原則で、星系政府に要求するのは惑星間航行が可能な宇宙船の建造禁止と帝国星界軍の募集事務所の設置のみで、これを超えた要求を領民政府は拒否できる。臣民に対しても忠誠を期待することはしない。
 官僚府も存在するが、そこに属する官僚のほとんどは地上世界出身者。
【外交】
 他国と外交官を交換し、外交官特権を尊重しているが、外交自体は全く重視していない。
 戦争においては情容赦なく、自身が滅亡するか、敵国の星間航行能力を奪い、星系単位で帝国に編入する以外に決着の方法はない。その苛烈さのため、皇帝2人と皇太子7人を含む多くの帝国の貴顕が戦死している。
 もっとも、星間国家でない限り帝国の大切な領土として扱うので、無意味に荒廃することを嫌う。そのため星間航行能力を失った星系の空間を封鎖するなどして降伏させ、降伏せずに飢餓が始まった場合も貸付などを行い援助するのが普通。
 やられたら10倍にしてやり返す、というのが行動原理。いかなる脅迫にも屈することなく、脅迫した者はそのほとんどが死に、生き延びても不幸な人生を送ることになる。
【経済】
 通貨単位はスカール。
【産業】
 他国船が領内星系に立ち入ることを禁じているが、七つの貿易港を指定して経済交流は行っている。
【言語】
 公用語はアーヴ標準語。文字はアース。
【文化】
 →アーヴ
【単位系】
 地球以来のCGS単位系。標準年=365日、標準日=24時間、標準時間=60分、標準分=60秒。
 長さの基本単位はダージュ(=cm)、質量の基本単位はボー(=g)。この基本単位系に倍数を表す接頭辞をつけて用いる。以下参照。
規模接頭辞長さ質量
1020ドリアル1000兆km100兆t
10161000億km100億t
1012ゼサ1000万km100万t
1081000km100t
104ウェス100m10kg
1
1cm1g
10-4シェス1μm(=1000分の1mm)0.1mg
10-8ソワフ1Å(オングストローム)0.01μg
10-12コス10Y(ユカワ)
10-16ペタ0.001Y
 もっとも、光秒(=約300セダージュ)、光年(=約95トダージュ)などの単位も利用するので、ゼサダージュ以上の単位はあまり使わない。また、プランク長とプランク重(プランク定数h=6.6261×10-34を基礎にする単位)を基本とした微小単位系もある。
 平面宇宙では特殊な長さ単位が使われる。天浬ケドレル(1セボーの質量で、完全移動状態をとる時空泡が1秒間に進む距離)と天節ディグル(時空泡内時間で1時間に1天浬進める速度)である。
【歴史】
 帝国建設に乗り出すにあたり、その根幹が最初に置かれた分野は交易であった。
 最初に大きな権益を得たのは船長職を世襲していたアブリアル一族である。アブリアルの長が皇帝となり、全ての平面宇宙航行船を所有することになった。さらに、8つの門も独占し、その利用に使用料を科した。
 ・帝国暦前1200年くらい 原アーヴ誕生
 ・帝国暦前1173年(離脱暦1年) 独立を宣言。
 ・時期不明 探査船を近くの恒星系につけ、都市船に改造
 ・時期不明 アース成立
 ・帝国歴前973年頃 母都市を滅ぼす。大放浪時代に
 ・帝国暦前157年 「複合時空のエネルギー平衡についてのタリスマン図」入手
 ・帝国暦前120年頃 公的記録の一部破棄に伴うカリュー氏の反抗(後生には都市船アブリアルの事故として伝わっている)。航行日誌を消失
 ・帝国暦前98年 ビボースが平面宇宙航行理論を完成。船王に報告
 ・時期不明 マアト・カー・ラーと接触
 ・帝国暦前52年 一星系に投錨、門を開く実験の開始
 ・帝国暦前19年 門を開くことに成功
 ・帝国暦前3年 最初の平面宇宙航行船セルドーが門をくぐり、帰還
 ・帝国暦前2年 平面宇宙側から門を開くことに成功
 ・帝国暦1年 建国帝ドゥネーが帝国の創建と帝国暦開始を宣言。帝国時代に
 ・同年 初代皇帝即位式。国章が八頸竜に
 ・時期不明 3つの星系を征服。3つの主要氏族(恐らくエスレル、ニューシュ、スポール)の長が領主として封じられる
 ・帝国暦42年(以下2項との前後関係は不明) 3人の地上人がアーヴに
 ・時期不明 5つ目の星系を征服
 ・時期不明 平面宇宙の先客に気付く
 ・帝国暦645年頃 ヤクティア戦役
 ・帝国暦685年頃 太陽系に近い門の発見
 ・帝国暦750年頃 星界軍における最後の乗員反乱勃発
 ・帝国暦812年 セクティア連邦併合
 ・帝国暦852年より前 シャシャイン戦役
 ・帝国暦905年 カミンテール戦役終結
 ・帝国暦940年 対帝国軍事組織、四ヵ国連合結成
 ・帝国暦945年 流砂作戦
 ・帝国暦952年 ゴースロス襲撃事件
 ・同年 スファグノーフ侯国、人類統合体により占領
 ・同年 四ヵ国連合と開戦
 ・同年 スファグノーフ門沖会戦で勝利。スファグノーフ侯国再占領
 ・同年 ラクファカール防衛戦に辛勝
 ・同年 イリーシュ王国の3分の2、三ヵ国連合により占領
 ・同年 スカレーシュ門沖会戦
 ・帝国暦955年 幻炎作戦
 ・帝国暦956年 狩人作戦
 ・帝国暦956年 淡雪作戦
 ・帝国暦959年 双棘作戦
 ・同年 雪晶作戦
 ・同年 ハニア連邦がクリューヴ王国に侵攻
疑問:マアト・カー・ラーとの接触時に100万近くいたアーヴが帝国創建時には30万以下になったのはなぜ?
 ・前120年頃の事故による大量死
 ・アメニイの推定違い
最先任従士長ボアルム・ウェサーシュ
従士の最上位の位階。ここから昇格すると列翼翔士になる。
旧ボークビルシュボークビルシュ・ムーラ/旧ボークビルジュボークビルジュ・ムーラ
ハイド伯爵家が帝国から譲り受けた軽武装貨客船。元は時空泡発生機関の異常により退役したビルシュ級巡察艦で、時空泡発生機関は艦橋ごと換装されている。現在は武装のほとんどをはずしているが、ボークビルシュの名で呼ばれている。船長はログドーニュ。
帝国暦958年にマルティーニュの軌道上に繋留。残っていた可動凝集光砲、主機関、時空泡発生機関をはずしてハイド伯爵城館になった。
ボードラズ
アトスリュア(ロイ)が初めてベルポウコスを競技したときのチームメイト。男性。
ベルポウコスの名手であるコセールよりも体力がある。
機動艇ポーニュ
.アーヴが大放浪時代に使用していた戦闘用の高機動ユニット。核融合推進。
.アーヴが前120年頃使用していた訓練用の1.。本来核融合弾が積まれている空間に居住区が仮設され、そこに16の座席が装備されている。

 □ ま行
マイン・タクリス
西ブーキク・ミンチウ団の選手(951年当時)。アーヴの世界に憧れているからか、ジントに対して敵対的。クー・ドゥリンとは幼い頃からの付き合い。
編纂士ミマビア
都市船時代、記録部の中で中心的な役割を担っていた役職。
メルハバ
.カプラン星系の第3惑星である有人惑星ケディに対するアーヴ側の呼称。1.をミーニクール星系の誰かが地名と勘違いし、それがアーヴに伝わったためその名で呼ばれている。
前120年頃アーヴと接触したが、アーヴが人工生命体であることを知ると交渉を断絶した。宗教的な理由があると思われる。
.1.におけるあいさつ。

 □ や行
 □ ら行
船王ラルス
都市船アブリアルの最高指揮官。アブリアルが代々務める。
その命令は絶対で、拒否権はない。
航法士リルビガ
平面宇宙での航行を担当する船員及び軍士。通常宇宙戦ではあまり仕事がないため忙しい通信士などの補助に回るのが普通。
ルー・ブレーシュ
前120年頃のアーヴ女性。アブリアル・ムイセーヌ、カリュー・エレークとは連合学校時代の同級生。三期生。
帝立生態園ルエ・スィタムローニュ
帝都にある帝立の生態園。恐らく動植物園のような施設。ロック・リンが送ったマーティン原産の植物も保管されている。
階級章レンスィムスィア/階級章レンリムスィア rénsimesiac
軍衣の胸に付いている、星界軍における階級を示すもの。辺を曲線で形作った二等辺三角形。銀色の縁取りの中に銀色のガフトノーシュが配置されている。地色は兵科を表し(赤(緋)は飛翔科、緑は軍匠科、白は主計科)、線や星が階級を示す(修技生は無地)。
副情報集積室ロイ・ザベール・リラグ
予備の情報集積室。何らかの理由で主情報集積室が使用できなくなった際に使用される。カリュー氏居住区の外にあり、他の氏族が警備を担当している。
寒いローマ
アーヴの間では絶対3度の真空を形容する言葉。
レスボー建艦厰ロール・レスボール
帝都にあるロイル級突撃艦などを担当する建艦厰。
レスポー建艦厰という記載もある。
ローフ・ライギア
前120年頃のアーヴ女性。
【嗜好】
 演説をするのが好き。演説の際に机の上に乗るクセがある。
ロセーシュ Losaich
根源29氏族の一つ。語源は「とかさ」。
【都市船時代】
 都市船内部の通信網を保守管理していた氏族。また船内設備の配置についても大きな発言力を持ち、しばしば大規模な内装工事の指揮を執った。交易好きとしても知られる。
【特徴】
 信念に忠実だが、その余り強引な面もある。また、他人の気持ちを忖度することに注意を払わないので図々しいと思われるきらいがある。
 帝国創設後は軍士としてよりも交易者としての活躍が目立ち、交渉によって邦国を一つ獲得したこともある。
 ロセーシュに関わると不幸になる、と一部のアーヴたちは頑なに信じている。
【宗家】
 ビデール大公爵家。
【家紋】
 白鳥が多い。
【家徴】
 ロセーシュの目ネ・ロセクと呼ばれる茶褐色の虹彩に青い縁取りのある目。
捕虜収容所ロニューグヴィ
戦争によって捕虜となった者を、故郷がまだ帝国に併合されていない場合に待機させる場所。領民政府に対し武装蜂起した人々なども収容される。一旦収容されても、帝国臣民として帝国領内であれば自由に移住できる。ただし、移住先の領民政府の許可も必要。
955年現在、14の地上世界が指定されている。初めの1年は生活費が支給されるが、その後は普通の地上世界と同じく自活する。治安維持や大規模施設の建築などは全て帝国負担のため税金がない。代わりに政治的自由もない。中心産業は開拓。最初は帝国が総督府を通じて統治しているが、援助なしにやっていけるようになれば帝国は手を引き、捕虜収容所の指定も解かれ、領民政府に統治が引き継がれる。
その性格上問題が起こりやすいため、いくらか厳しめの刑法が施行されている。(ある標準的な捕虜収容所では、全ての犯罪の最高刑は死刑。詐欺は10年以上の重労働刑、殺人は25年以上の重労働刑、執行猶予という概念はない。)

 □ わ行
記録長ワス・サクンソセール
都市船時代の記録部の最高責任者。