第19回 ネモの親友

これまでのあらすじ

 時に西暦1889年。ノーチラス号は資材補給のため南極の秘密基地へ向かうことになった。人跡未踏の大陸に不安げなナディアや3人組に対し、ジャンは一人で浮かれる。
 そしてノーチラス号は海底火山や巨大なオーム貝の襲撃などの大自然の脅威を乗り越え、ついに南極大陸の地下に広がる大洞窟に浮上したのである。

ストーリー

 紆余曲折を経てようやく基地に到着したノーチラス号。そこは、南極の地下にある大空洞に、アトランティス人が建造した巨大なドックだった。艦の修理のみならず、多くの資源の点でも南極大陸は恵まれているのだ。
 珍しい基地に目を奪われる3人組に対し、ノーチラスクルーは修理に大忙しである。そんな中で、ネモはジャンとナディアを伴って出かける。氷の中の通路を通り、どんどん奥へ入って行く三人。そこは、巨大な世界樹や既に絶滅した知能を持つ恐竜などがその姿を留める氷の博物館だった。地球の歴史や、自然の偉大さに触れて感動するジャン。
 目的地は白いドームだった。その中で巨大な白い鯨イリオンが現われる。20000歳を超える鯨のイリオンは、ネモの親友だった。寿命が尽きようとする友に、ネモは最後の別れに来たのだ。ネモとの別れをすませたイリオンは、今度はブルーウォーターを介し、ナディアにテレパシーで語りかける。自分が見てきた人間の歴史を語るイリオン。その血みどろの歴史にナディアは心を痛めるが、イリオンは『人間は面白い生き物だが愚かではない』と、そんな人間を信じていることを告げる。
 別れ際、イリオンはナディアに、「お前の探している人物はすぐ近くにいる。そしてもう一人、思いがけない人物に会うだろう」と予言する。それが自分の父と兄のことを指していることにナディアは思い至るが、イリオンはそれ以上は語ることなく、静かに水中へ戻っていった。
 イリオンのところから戻った二人を、ネモは地表、つまり南極点へ案内した。南極点に立てたことにジャンは大喜びだが、ナディアはただ連れてきてもらっただけじゃない、と冷たい。しかしネモは、20世紀になれば人類は自分の力でここまで来るだろう、そのことを私は信じている、と語る。そのとき、頭上にオーロラが光り出す。その美しさに感動する二人だが、ナディアは隣でオーロラを見上げるネモの目に涙を見たような気がした。イリオンの最後の言葉が胸をよぎる。しかしその思いを胸に秘めたまま、三人は基地に戻るのだった。

コメンタリー

  • 【シナリオ】
    NHKから、捕鯨問題に触れたいという要望が出されて作られたエピソード。
  • 【エレクトラ『ここは…地表よりずっと暑いの』】
    じゃあなんで第18回でグランディス達に防寒着を着せようとしたん?
  • 【秘密基地】
    ノーチラス号がドックに入るときにクレーンが動いたり電気が付いたりしてますけど、この基地って誰かが駐在してるんでしょうか。こんなコンビニもない、Amazonも届かない場所にいたら僕なら死ねる。
  • 【ジャンの顔の手形】
    左頬のがナディアの手形。見にくいですが右頬にはマリーの手形もついています。
  • 【いずれは外套部の対流などが発見され、証明される時が来るだろう】
    大陸移動説が実証されたのは1950~1960年代頃。外套部とはマントルのこと。
  • 【氷の博物館】
    アトランティス人が基地を作ったのが20000年前、ホモ・ダイナソニクスが滅びたのが7000万年前。…だれが氷の博物館を作ったんだ?
  • 【イリオン『だから、お前も話す必要はない、ただ心で念ずればよい』】
    絵コンテには(枚数がかかるからな…)というメタネタが書き込まれている。
  • 【イリオン『私が生きてる間、地球は20000回太陽の周りを回った』 ナディア『20000才…!?』】
    僕はナディアが太陽暦を理解していたことに驚きです。
  • 【航海長】
    一瞬髪があるように見えたけど影だった。
  • 【ネモ『20世紀になれば、流氷を砕き、氷を踏みしめ、人間は自分の力でここまで来るだろう』】
    人類初の南極点到達は1911年のロアール・アムンセン一行によるもの。
  • シリアス話だったのでツッコミは軽めでお送りしました。イリオンのセリフとかその存在自体は結構深い伏線になっているんですが、それは最後のほうのお楽しみってことで。
    さて、次回からは3話ほど続けて一つのエピソードが描かれます。特に21話、22話はナディアの中でも屈指の出来なのでぜひ見逃さずに見てもらいたいです…って旅行中だからどっちも見られないことに気づいた、今!

元ネタ

  • ドックに入るノーチラス
    特撮映画「緯度0大作戦」での、同様のシーンから。
  • 測的長『黄鉄鉱、ボーキサイト、マンガン…』
    特撮映画「海底軍艦」で、神宮司が潜んでいた南の島の鉱物資源を説明する台詞から。
  • 氷の中の世界樹
    星野之宣のマンガ「世界樹」に登場する、火星の氷の中にあった世界樹から。
  • ネモ『彼らは7000万年前に太陽黒点の変化によって生まれた宇宙放射線によって地上から滅びてしまった』
     マンガ「ゲッターロボ」で、未知の宇宙線「ゲッター線」により、恐竜人が地底へ追いやられたことから。
  • 大陸移動説の説明に使う地図が英字新聞
    特撮映画「日本沈没」で、田所博士が大陸移動説を説明するのに英字新聞を破いて地図を作ったことから。
  • ネモ『科学者にとって一番大切なことは何か、分かるかな?』『それは勘だ』
    特撮映画「日本沈没」における田所博士の台詞から。
  • オーロラの効果音
    特撮テレビ映画「帰ってきたウルトラマン」で、光怪獣プリズ魔が出現するときの効果音から。

次回予告

ナディア
 ネモ船長、どうしてジャンがあんなに叱られなくちゃいけないの…!何よ、ジャンの失敗でガーフィッシュに見つかったからって、どうせやっつけるんだから同じじゃないの!
エレクトラ
 ネモ船長…いつまであの子供たちをこの船に乗せておくおつもりですか?最後の戦いが近づいているというのに…
ナディア
 ふしぎの海のナディア第20回『ジャンの失敗』見てね。

トラックバック URL

コメント & トラックバック

今思うと、寿命が近いのはイリオンじゃなくてネモ船長の事だったのかなって思うのです。

> ノエッチさん
コメントありがとうございます。
あそこでのやりとりは「お互いにもう生きて会うことはないということだ」「…どうして?」「私は長く生きすぎた。もうすぐこの命も尽きるだろう」なので、イリオンの寿命も近かったのは事実のような気がします。とはいえわざわざ「お互いに」と言ってることからすると、言外にネモのことも含んでいるのかも知れませんね。

コメントフィード

コメント

皆さまのコメントが励みになっています。ありがとうございます。